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(uno-side)
美「私は昔、奏くんに救われたんです」
ポツリと告げた沢本さんは、ゆっくりと語り始める。
美「天才の母親と妹をもちながら…彼自身は平凡な人でした」
才能に恵まれず、どれだけ努力しても報われない人。
美「私も同じでした」
宇「…」
美「当時の声楽界で詩さんに敵う若手はいなかった。私もまた、劣等感を抱いて絶望した事も少なくありません」
沢本さんも声楽をやっていたんだろう。
昔の詩の話を当事者から聞くことはなくて。
美「でも、奏くんはどんな状況でも逃げなかったから、」
当然、詩のお兄さんの話を聞く機会も今までなかった。
美「彼に救われました」
宇「素敵な、人だったんですね」
美「ええ、だからこそ許せなかった。あの日……奏くんが睡眠薬を大量に摂取した時、彼は私に留守電を残してました」
目を伏せた沢本さんが小さく告げる。
美「俺は結局何も救えなかった。ごめん、もう頑張れない。…奏くんが残した、最後の言葉です」
宇「っ」
美「詩さんは紛れもない天才だった。それこそ、私達のような凡人が死ぬ気で努力してきた全てを、一瞬で滅茶苦茶にしてしまえるほどに」
宇「…だから許せなかったんですか」
詩のお兄さんが守ろうとした家族を、皮肉にも詩自身が壊してしまったから。
美「でも…」
フ、と沢本さんは苦笑を浮かべる。
美「いくら天才だからって、詩さんもまた只の子どもだったという事に……気付いたのは最近ですが」
何も言えなかった。
詩もまた、家族を求めただけで。
年相応の……一種の反抗期のようなものだったんだろう。
私を見て。私の想いに気付いて。
そんな、只の女の子の願いが引き起こしてしまった事件。
……それが、綾瀬詩の真実だ。
美「……宇野さんはこれからもずっと詩さんに真実は告げないつもりですか？」
宇「その方が良いかな、とは思ってます。もうこれ以上詩に自分を追い詰めてほしくないから」
真実を知れば、きっと詩は自分を責める。
そんな姿は見たくなかった。
美「……彼女、そんなに弱くないと思いますが」
宇「え？」
美「いえ……嗚呼、１つだけ忠告を」
沢本さんは僅かに眉を寄せる。
美「真鍋裕也には気を付けてください」
宇「え？」
美「少し思うことがあって調べたのですが、彼は─────」
伝えられた思わぬ情報に、私は瞠目したのだった。
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海(プロフ) - くみさん» ありがとうございます！楽しんで頂けて、とても嬉しいです♪しかもかなり長かった筈なのに一気読みして頂いたとは…！本当にありがとうございます！マイペース更新ですが、これからも精一杯頑張りたいと思いますので、よろしくお願い致しますm(__)m (2019年6月22日 8時) (
レス) id: 00727ba42b (このIDを非表示/違反報告)
くみ(プロフ) - ものすごく楽しいです！！昨日から一気に読んでしまいました！これからも楽しみにしてますね！ (2019年6月21日 12時) (レス) id: 9ac3551b76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：海 | 作成日時：2019年3月24日 19時
