【短編】道端に咲く花【実l況l者】

0時前後に我儘を【aisn】 ページ40

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｢いやー、本当に来ると思ってなかったわー｣




強く風の吹く外と暖房の効いた暖かい車内の温度差に指先がじわじわと暖かくなっていくのを感じながらスマホを見ると画面には12月5日21時15分の表示

すっかり乗り慣れた助手席に座り悴んでいた手でシートベルトをしながら笑ってそう言うと隣の運転席に座る大学の頃の男友達は少し眉間に皺を寄せながらアクセルを踏み車道へと車を動かし始めた




｢おめぇよぉ、俺がこーゆーの冗談で言うタイプじゃねぇって知ってんだろ｣

｢そうだけどさぁ、｣




なんでまたこんな週前半の平日に、と言おうとすれば、ぎゅるるる、と代わりに私のお腹から大きな声

思わず口を結んで両手でお腹を押さえれば隣人はクククと我慢しているように小さく笑い始める

しょうがないじゃん、とも言わず隣人を睨めばいつもどおり運転している愛ゴリの横顔が目に入る、ただ目には少し涙を浮かべていて長い指がその涙をすくっていた




｢はー、すげー腹の音、なに食いてぇ？どうせ飯食ったあと家まで送ってくしお前呑んでも良いけど｣

｢え、呑む｣

｢じゃあ駅前でいいか、呑み過ぎんじゃねぇぞ〜｣




いつもの煽り口調に戻ったな、と思った、でもきっと、多分その言葉は笑ってはいるけど明日のことを気にしてくれているからのことで

私ははーい、と呑気に返事をして座席にもたれ掛かる、女として見られてないだろうから出来る友達としての行動

そういえば私愛ゴリのスーツ姿初めて見たかも、私と同じように会社帰りでスーツという珍しさ、にまじまじと見つめてしまう

だって、スーツで会うなんて初めてだからちょっと知らない愛ゴリを見ているようで少しだけかっこよく見えてしまう、意外とモテたりするのかな、実際大学のとき同棲寸前までした彼女いたし

あー、なんか、2人のときもそんなまともに化粧してなかったとはいえ流石に疲れた顔で会うべきじゃなかったな、なんて思っていると突然視界が暗くなる





｢……見過ぎだろ｣

｢そんな見てないから｣

｢これ以上見ると事故るぞ！｣

｢火傷するぜじゃないあたりリアル｣





視界を遮っていたのは愛ゴリの大きな手だと気付いたのは何となく温もりと肌色を感じたから、長い指の隙間から見えた愛ゴリの顔は真っ赤に染まっていた



すぐ照れて、すぐ赤くなるその顔も

弱気になるときに出る情けない声も

好きな要素の1つだったな

なんて




友達のその先を
未だに少しだけ期待している私がいる

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