【ab】りんご系少女は今日も髪を揺らす《 完結 》

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駅員室で話を聞き終わった直後スマホを見ると
学校から何度も電話がかかってきている

折り返し電話をすると担任の先生が
とても心配してくれて泣きそうな声だった

警察に話を聞いてもらっている間
アブ先輩は学校に電話してくれていたみたい
本当ならば遅刻なのにアブさんのお陰で
先生方は公欠扱いにしてくれたらしい








｢あの、アブ先輩……
何から何までありがとうございました！｣

｢別にたまたま乗り合わせただけだよ｣








何故かぶっきらぼうに言葉を吐かれた

いつもなら優しいのに今日はどうして？
アブさんも遅刻してしまったからかな？
だから少し怒っているの？

ごめんなさい。と謝ろうと頭を下げる
でも返ってくるのはため息だけ









｢痴漢、今回だけってことはないよね？｣









目に見えて見えるアブさんの怒り
いつもは怒らないのにいつもは笑顔なのに
初めてちゃんと怒っている姿を見たかも

実は何回も痴漢されていて
乗る時間を変えても号車も変えても
何故か毎回同じ人にされている気がします

素直にそう言えたらどれだけ楽だろう
その胸に身体を預けて泣けたら
どれだけ楽なんだろう

だけどそんなことをしたら面倒な女って
アブさんの嫌いな面倒な子になりそうで
素直に言ったら嫌われてしまいそう









｢黙っていることは肯定ってことかな？｣

｢もう、何で早く言わないかな！｣

｢少しは頼りなよ｣

｢明日から学校一緒に行くよ
何だったら家のやつに車で送り迎えしてあげる｣









ゲームをしている時みたいなムキな姿
一生懸命に私に向かって怒る姿

私もしかしたら今までの人とは違って
アブさん愛されているのかもしれない

そう勘違いしてしまいそうだけど
その勘違いが本物だと信じたくて









｢……明日から一緒に学校行ってください｣

｢勿論、喜んで｣

｢ふふ｣

｢え、なに？！なんかおかしい？！！｣









いつもの王子様みたいなセリフなのに
セットされていないボサボサの髪で
カッコつけるアブさんが何だか可笑しくて

それを分かっていなくて焦っている
アブさんが何だか可愛くて

私のワガママを聞いてくれて
私のことを考えてくれる
優しい人が私の隣にいることが幸せ









嘘みたいな優しい世界が私の世界
とても幸せで贅沢で
風に揺れるポニーテールも喜んでいるみたいだった

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