回避特化とラストスパート。 ページ36
「っ、来た……!」
背後から鋭く飛んでくる風魔法を跳び退き躱し、木に隠れてやり過ごし、襲い来る蜘蛛を【大海】で牽制、カブトムシを【蜃気楼】で誘導する。
「……分かれ道……ここは……?」
前からはカブトムシ、右からは蜘蛛、左は……トレント。
「……左ッ!」
瞬時に頭を回転させ導きだした解を信じ、左へ跳ぶ。
視界に移る赤い実は三本分、つまりトレントは三体。
当然ながら大量に幹なりツタなり根っこなりが飛び出してくる。
「【蜃気楼】……っ!」
幻を生み出して飛び出せば、幻目掛けて大量に根が伸ばされる。
薄気味悪い嗤いが重なり耳に届く。
「……ありがとっ! ホント助かる!」
そう嬉しそうな声がその場の先から聞こえ、空間が歪み本来の姿が露になる。
そこにいたのは当然ながら人間ではなく……
「……!」
あの風蜻蛉であり、それも、幾本もの木に翅を穿たれギチギチと不快な音を鳴らしながらよろよろと飛行しているものであった。
トレントが捉えたのは風蜻蛉であったのである。
傷ついた風蜻蛉はいくら風魔法を使おうとももう既に追い付ける程でなく、無情にも距離は開いていく。
そして。
「っ、着いたっ!」
もうカブトムシも蜘蛛もトレントもいない、風蜻蛉はとうに振り切った。
目の前にはあの家。
もう気配察知にも何も引っ掛かっていなかった。
「今戻りましたっ!」
ドアを勢いよく開き報告すれば、「無事でよかった」と呑気に返される。
「……無事じゃ、ないん、ですけどね……」
走りきった安心感からか、一気に息も切れてくる。
ちなみに結果は50分、なんとか間に合った。
「どれ、礼をせねばだな……」
だが、これでようやく目的の物が手に入る。
「【超加速】のスキルロールだ。役に立つ筈だ……遠慮はいらんぞ」
「ありがとうございます」
手を伸ばして受け取ろうとするが、その瞬間老人の姿が掻き消えた。
「えっ……!?」
驚き咄嗟に周囲を見回せば、背後から笑い声が聞こえてくる。
即座に振り向けば、まるで悪戯の成功した少年の如く笑う老人の姿があった。
「ふふ……精進するといい」
「っ、は、はい!」
何はともあれ、これで【超加速】が得られた。
短いながらもAGIを1.5倍に跳ね上げる協力なスキルだ。
必死に走った己を褒め称えながら、扉を開き外へと出た。
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リョウナ - 深緑クロロさん» ありがとうございます!!お互いに頑張りましょう!! (6月21日 8時) (レス) id: 25016b7547 (このIDを非表示/違反報告)
深緑クロロ(プロフ) - リョウナさん» ありがとうございます、そう言っていただき嬉しいです!自分も誰かに助言なんて言える立場じゃないんですが、とにかく自分のやりたいように楽しく書いていくのが一番だと思っています。何事も楽しくなければ良い物を作ることは出来ませんから。お互い頑張りましょう! (6月20日 17時) (レス) id: 3d6a53223e (このIDを非表示/違反報告)
リョウナ - この作品、めちゃくちゃいいですね!!あと、書くのが上手すぎます!!それで、もし出来たらなんですけど、うちの作品にアドバイスをくれませんか?お願いします!!これです→https://uranai.nosv.org/u.php/novel/heoaud/ (6月20日 15時) (レス) id: 25016b7547 (このIDを非表示/違反報告)
黒炉@深緑ノ支配者@全初卓部員(プロフ) - 幽霊さん» ありがとうございます!これからも更新続けていくのでよろしくお願いします! (2023年5月11日 16時) (レス) id: 3d6a53223e (このIDを非表示/違反報告)
幽霊 - この作品好きです!めっちゃ大好きです!!更新とか頑張ってください!! (2023年5月11日 13時) (レス) @page29 id: fbfc17f9e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロロフィル@深緑の指揮者 x他1人 | 作者ホームページ:No.
作成日時:2023年2月25日 15時