大盾使いはだいだらぼっち。 (ページ13)

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一旦ゲームからログアウトし、再び着替える。
今度はいつもの調理服だ。

厨房へと立ち、手を清潔に洗って台を拭き始めて、ようやくバイトの子たちが集まり始めた。

人数自体はそんなにいないし、店も広いわけではないので指示が円滑に回る。

それぞれの場所の準備をさせて、自分は海鮮の下準備に入る。
昨晩競り勝ってきた魚を取り出し、解凍していく。

そうしていくうちに昼飯時となり次第に客足が伸びてくる。

｢いらっしゃいませー！｣
｢どうも三橋さん！いつもお世話になってます｣

こんな小さな店なのだから、客は基本的に常連が大半を占めている。
近所の年配の者だったり、知り合いであったり。
そして中には。

｢三橋さーんこんにちはー！｣
｢おういらっしゃい｣

日々勉学に励む学生も混ざっている。

｢注文は？｣
｢海鮮丼で！｣
｢オーケー、今作る｣

次々と作る料理が伝えられてくる。

｢酢飯良し、魚良し。作るか｣

手袋を嵌め、軽く手首を振ってから包丁を握る。
繊細な刺身の味を損なわぬよう、丁寧に、しかし迅速に切り分けていく。

そして丼に米を盛り、その上に何枚も乗せていく。
最後に真っ赤なイクラを乗せて完成だ。

｢うーし、気まぐれ海鮮丼一丁！｣
｢はーい！｣

運ばれていったのは鮮やかなオレンジ色に染まるサーモンの山。
その頂点に佇むイクラが視覚と味覚を更に刺激する。

昨日は鮭が大量に獲れたらしく、多く買ってきたのでサーモン尽くしとなる。

次々と作っていき、運んでもらえば嬉しそうな声が厨房にも届いてくる。

一段落したところで、真ん前の席に座る学生にも直接渡す。

｢ほれ、めしあがれ｣
｢わぁ…！｣

その見た目に目を輝かせ、がっつくように食べては頬を抑える姿を見て、進の顔には自然と笑みが浮かんでいたのだった。
酷く優しい微笑みであった。

｢ごちそうさまでしたー！｣
｢はいよー。頑張れよー！｣

最後の客を笑顔で見送り、ほぅと息をついてバイトの一同に向き合う。

｢さて皆さん、お疲れさまでした。賄いの時間ですよ｣

ここまで頑張った彼らにも海鮮丼を振る舞えば、たちまち歓喜の声が響く。

最後まで朗らかな雰囲気に包まれる三橋亭は、そうして暖簾を下ろした。