不死鳥で独占欲の強い彼とオタクで冴えない彼女は：番外編 4

未来への話 9 ページ43

俺が突き放った言葉が
部屋の中の空気を冷たくする
Aは、いま、どんな気持ちなんだ



「・・分かった」



その声は穏やかだったが
彼女が自分の本音を
隠してしまう癖があるのは・・・
もう分かっているくせに

どうして、と
なんで、と本当は彼女は言いたいはずだ
その本音を全て飲み込んで
・・・いや飲み込ませたんだ、俺が

情けない顔を隠すために
片手で顔を覆うと



「・・・マルコさん」



彼女は部屋を出ていくことなく
ギ、という音と共に
ベッドが少し揺れたので
少し俺から距離をとってベッドに
腰かけたことが分かった

彼女は俺に近づくことはなく
そのままの距離で
優しく、柔らかな声で




「私、マルコさんが好きだよ・・
離れてても、その気持ちは
・・・絶対に、変わらないからね」




じゃあまた食堂で、と彼女は言って
ギィとベッドから立ち上がり
扉へ向かってしまう前に

ガシ、と彼女の小さな手を掴んだ



「・・・俺も好きだ・・・!
でも・・ッ・・・」



顔を上げて言った瞬間に、ボロッと
涙が瞳から零れていく

俺の涙を見て彼女は少し驚いた後
握られた手をゆっくりと離し
しゃがんで俺の片手を両手で包み込む



「・・これは大丈夫?」


「あぁ・・・大丈夫・・・
耐えられるよぃ・・・」


「そっか・・・
・・・どこまで近づいたらダメかな?」


「・・・キス以上は耐えられる自信がねぇ」



Aは、真剣に俺の瞳を見つめて
分かったと頷くと



「・・・・ありがとう、教えてくれて
これから近づくときは言うから
ダメな場合はダメって教えてください」



ちなみに私はいつでもどこでも
触って大丈夫だよ、と彼女は
安心させるように俺に笑いかけた

冷たい言葉を放ったので
俺から離れていくと思ったのに
・・・彼女は、Aは・・・・

こんな俺の傍に居続けてくれるのか

Aの、暖かい優しさに触れる度に
この人を失いたくない、と
想いが強まって
涙がとめどなく溢れてくる



「・・・拭ってもいい?」


「う、あぁ・・・・ッ・・」


「うん」



彼女は仕方なさそうに笑いながら
瞳から零れていく涙を
きゅっと指ですくい取って拭う

彼女を抱きしめたい想いを
ぎゅっと胸の中にしまい込んで
決して自分からは彼女に触れないよう
手はぎゅうと強く自分の膝を握った


「・・・訳は、マルコさんが
話したいタイミングでいいからね」


彼女の優しい言葉に
俺は甘えた

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