不死鳥で独占欲の強い彼とオタクで冴えない彼女は：番外編 4

狂う 2 ページ19

彼女は服に着替えた後
涙を服の袖で拭って
俺の顔を一瞬、見た後に
すぐに顔を下に俯かせて視線を逸らす

ズキ、と胸が痛んだ
せめて彼女の痛みが和らげるように
小さな両手を、俺の両手で包み込む


「・・・過去の白ひげ海賊団で
一体何があったんだ・・・」


「・・・・っま、マルコさん・・!
一個、お願いしてもいいですか・・」


彼女は話し出そうとするときに
また瞳からボロボロと涙を零す
いいよぃ、と頷くと
Aは一層に泣きながら言う


「私のこと、嫌いに・・ならないで・・ッ
嫌わないで・・・!」


「・・・絶対に嫌わねぇよぃ・・
俺は一生Aのことが好きだ・・
大丈夫だよぃ、何があっても
嫌うことなんてねぇ」


不安で泣いてる彼女に
愛おしさが増すばかりだ
ぎゅう、と抱きしめて、頭を撫でた

すると彼女はまた泣き出してしまう
よしよし、と声をかけながら
涙を拭い、落ち着くまで背中をさする

時間が経つにつれて
外の窓からは雲行きが
怪しくなっていくのが分かった
ただのスコールか、それとも
・・・嵐が来るだろうか

少し天候のことを懸念していると
部屋に置いてある電伝虫が鳴る


「ちょっとごめんな?」


「う”、はい”っ」


彼女は気を遣って離れようとしたが
俺は抱きしめる力を緩めなかった
Aも、そのことに気がついて
大人しく俺の胸の中で鼻をすする

腕を伸ばして、ガチャと取れば
電伝虫の向こう側からは
航海士の報告する声が届いた


「じゃあ、進路は変えずに
サッチたちに吹っ飛ばされないようだけ
伝えておいてくれるか

俺は少し体がだるくってねぃ
しばらく休んでるよぃ」


了解です、と快活な声がした後に
ガチャンと受話器を切った


「ぐす、ありがとうございます・・」


「・・・気にするなよぃ」


再び、ぎゅううと抱きしめた
するとAが口を開いて、小さな声で
このまま、顔を見ないで話してもいい?
と聞いてきたので
いいよぃ、と頭を撫でながら返事した

彼女は、一度深く呼吸をしてから
あの、と話を始めてくれた


「・・・じ、実は・・
・・わたしっ・・・その・・・」


話そうとすると息が上がってしまう
Aの背中をゆっくりとさする
敢えて相槌を挟むことなく
彼女の言葉をじっと待っていると


「・・っ、だ、抱かれちゃった・・の・・!
過去、の・・・マルコ、さんに・・・ッ」


今まで、抑えていた感情が
その一言で一気に理性を決壊して

ぐっと彼女を抱きしめる力が
強くなってしまった

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