30、 ページ35
.
ー話があるんだ。
今朝、優くんから届いたメッセージ。
今日は平日なのに、珍しい。
《今日は、必ず行くから。》
と念を押すような言葉に
何を言われるのだろう、と心がざわめいた。
.
待ち合わせ場所へ行くと、
優くんはもうすでに待っていた。
『ごめんね!待たせちゃって。』
慌てて駆け寄る私に、
「んーん、たまにはね?」
なんて笑いかけてくる姿に
やっぱりかっこいいな、この人は。
なんてときめいてしまう。
同時に、彼への罪悪感と
自分に対してのとてつもない嫌悪感が襲いかかる。
あぁ、私はこんなに素敵な人を裏切ったのか。
.
.
ここだよ、と
連れてこられたのはきちんとしたレストラン。
ドレスコードはないが
普段着では浮いてしまうような、そんなお店。
…お洒落してきて良かった。とほっとする。
.
他愛もない話をしながら食事をして、
軽くお酒も飲む。
いつもなら優くんも飲むのに、
彼が頼んだのはソフトドリンクだった。
.
「…A」
『ん?なぁに?』
笑いながら向かい側を見やると、
そこには真剣な顔をした優くんが。
ーこれを、受け取ってくれないかな?
.
差し出されたものを目に捉えた瞬間、
私の思考が完全に止まった。
小さい正方形のそれの蓋が
優くんの手によって開けられる。
私の瞳に、きらりと輝くものが映る。
私の心の奥底から、震えが起こる。
…だめだ、言わなきゃいけない。
雰囲気を壊してしまうかもしれない
この人から笑顔を奪ってしまうかもしれない。
または罵声を浴びせられるかもしれない。
でも、このまま隠し続けるのは無理だった。
全て話して、判断を優くんに委ねたかった。
.
そう、私は
“罪悪感を背負ってこの先も生きていく”
という重すぎる責任から逃れたかったのだ。
本当に、どこまでも最低だ。
.
354人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yukino(プロフ) - この作品もとても面白いです!!!唯梨さんの作品どれも面白過ぎてずっと読んでしまします!(勉強もしろ) どうやったらこんな神作書けるんですかね?(笑) (2022年2月5日 20時) (レス) id: 7786e574fd (このIDを非表示/違反報告)
月見おはぎ - もしアニメ化されたらリアルタイム&録画で見て、DVD出たら鑑賞用と保存用と拝む用で買いますね(真顔) (2021年8月24日 2時) (レス) id: f413eaa44e (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - こび こびさん» アニメ化www映像になんてしたらもうわたし心崩壊しそうです…でもありがとうございます…! (2021年3月5日 8時) (レス) id: 10a0ab61a8 (このIDを非表示/違反報告)
唯梨(プロフ) - 茜さん» そうなのよ…結果的に実弥さんに落ちたわけだけど、優くんが破られた婚姻届みたときのことを考えるともう心抉られるよね…。泣 新作の方でもコメントありがとうね! (2021年3月5日 8時) (レス) id: 10a0ab61a8 (このIDを非表示/違反報告)
こび こび(プロフ) - ぜひ!実弥でアニメ化してほしい!笑笑 (2021年3月5日 8時) (レス) id: f23a575c1b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:唯梨 | 作成日時:2021年3月1日 9時