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___何もない場所がいい。
濁した言葉の奥で本当はそんなことを考えていた。今ある環境が嫌なんじゃない。
たくさんの弟たちと、スタッフさんと仕事に囲まれる今の自分に嫌なところなんて何もない。むしろ恵まれていると思う。
けど、時々自分のことを誰も知らなくて、期待も不満も嫌味も結果も何もないそんな場所に行きたいと思うことがある。
もしかしたら、これが“逃げたい”に繋がっているのかもしれないと、ふと思った。
SC「あー…日本?」
「スンチョラそれは無理だよ」
SC「なんで」
「車で行けない」
「ああ、でも飛行機で飛ぼうか。飛行機っていつなら間に合うんだっけ」
SC「…本気か?」
「言ったでしょ。どこにでも行くって」
SC「いや、車は?」
スマホを取り出して何やら調べ出したAに問う。
画面に表示されているのはもしかして航空会社のホームページだろうか。…こいつ本当に飛ぶ気か?
「
SC「いや、でもやめよう。やめよう日本は」
「なんで?」
SC「時間もないし、あいつら置いていけないだろ」
「じゃあ、どこがいいかな」
偶然で取れる免許がどこにあるのか。
いや、でも飛行機に飛び乗ろうと突発的に考える人間なら、偶然取れる免許もあるかもしれない。
____そのうち飛行機の免許取ろうとか言い始めそうだな。飛行機は無理でも空を飛ぶ何かとか。
目の前で本気なのか冗談なのかよく分からない思考回路を繰り広げるAのせいで、逃げなんて変な考えはとうの昔に消えていた。
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柊(プロフ) - ぴょんさん» コメントありがとうございます。自分の文章にそう言ってもらえてすごく嬉しいです!こちらこそこれからもよろしくお願いします☺︎ (2022年9月26日 9時) (レス) id: 1c5041063e (このIDを非表示/違反報告)
ぴょん(プロフ) - すごく深みのある文章で、読み応えがあります。とても面白い小説を生み出して下さりありがとうございます。これからも更新楽しみにしております(><)♡ (2022年9月26日 0時) (レス) id: 0051795449 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 | 作成日時:2022年9月23日 17時