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Aは滅多に嘘をつかない。
けど、よく冗談は言う方だと思う。
DK「あ、Aーひと口ちょうだい」
「いやだ」
DK「えー」
「冗談だよ。ドギョマ」
あははといつものようにAが笑う。口元に運ばれたパウンドケーキをひと口もらえば、「いいよ全部食べて」とそのまま押し込まれた。
片手にお菓子、片手に紙。横から覗き込むように自分。そのうちAの視線が注がれていたのは、手元の紙だけだった。
だからなのか、お菓子に口の水分を全部もっていかれて咽せた瞬間びっくりしたように顔を上げる。
「ああ、ごめん」
DK「い、いや大丈夫、多分」
「そこに。その冷蔵庫に水入ってるから」
DK「あ、ありがとう」
「自分のじゃないけど」
DK「え!?じゃあ誰の!!?」
「冗談だよ。ちゃんと自分が昨日買ってきたやつだから安心して」
また冗談かと弱いため息を吐いて、さっき開けて、焦って閉めたペットボトルをもう一度開ける。
よくよく考えれば、今回のツアーでひとり部屋を勝ち取ったAの部屋に別の誰かの水がある方がおかしい。
ミンギュあたりが入り浸っていそうな気もするけど、ミンギュだったら怒らないし、焦る必要もなかったなと思う。ジョンハニヒョンだったら少し怪しいけど。
DK「そんな真剣な顔して、なに見てたの?」
「ああ、これ?」
DK「もしかして明日のやつ?」
Aが手に持っていたのは、これから続くツアーの図面だった。
どの曲でどこを走るか、どの場面でどこに立つのか。そんなことがスタッフさんとA、両方の字で事細やかに書かれている。なんならそこに日本語もあった。
いつもよりも細かく、具体的に書かれたものだった。
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柊(プロフ) - ぴょんさん» コメントありがとうございます。自分の文章にそう言ってもらえてすごく嬉しいです!こちらこそこれからもよろしくお願いします☺︎ (2022年9月26日 9時) (レス) id: 1c5041063e (このIDを非表示/違反報告)
ぴょん(プロフ) - すごく深みのある文章で、読み応えがあります。とても面白い小説を生み出して下さりありがとうございます。これからも更新楽しみにしております(><)♡ (2022年9月26日 0時) (レス) id: 0051795449 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 | 作成日時:2022年9月23日 17時