【赤羽業】私は……妖狐

妖39 ページ42

赤羽side

5分も経ってないのに
長く感じる時の流れ



相対性理論




Aの頬を一撫でしてから
立ち、男の方へ向いて顔を合わせる



男と俺の間
冷たい風が音もなく通り抜ける



無表情な男

心の内を読み取る事が出来ない



渇いた喉
唾を飲んだ時男が口開く


「お前は何をしに此処へ来た」

「勿論､俺の可愛いメイドちゃんを連れ戻しにだけど?」


「そんな事も察せれなかった訳?」
と､試しに挑発してみても

男は眉1つ動かさず
無表情に、黙って此方を見てるだけ



寝踏みする様な眼
気に入らない


「成程。お前が此奴の“現”主か」


無機質なトーン
「だったら何?」と返す


「…」


俺の質問に何も返さず
男は無表情で懐を弄る



刃物…､凶器か
警戒



警戒してたら
男は懐から何かを取り出し、投げる



音を立てて
床に落ちた何か



何かの正体は2つの鍵で
男は「やる」と、一言


「その娘の手錠と足枷の鍵だ」

「…………は?」


男の予想だの発言に
空を切った音が漏れた


「…何?今更穏和に済まそうって訳?」


警戒しながら問うと男は
「あぁ、それに近いな」と


「お前は餓鬼で此奴等は大人。にも関わらず此奴等はお前に負けた。俺は金しか興味がないから此奴等が殺られたからと言ってお前を殺る気等ないし、此奴等が殺られたのは此奴等の落ち度だ。金が手に入れば俺はそれで良いが…､お前と殺り合うのは正直面倒だ」


男は一旦区切り、
「それに」と、話を続ける


「目的は果たしたしな」


目的…?

聞き逃しが出来ない単語
聞き逃しちゃ駄目な単語



「目的って何?」
って問う


「アンタの目的って金じゃないの?」


訊いても､男が答える事なく､
「お前に教える義理はない」と、


「まぁ､教えなくとも時機に判るが」


男の意味深な発言に眉根を寄せるも
男は素知らぬ振りで踵を返す


「俺がいつ迄も此処に居たらお前は警戒して止まないだろうからな。帰る。…＿＿＿」


最後、小声で何か言い
部屋から出てく男



扉が閉まったら
床に落ちてる2つの鍵を拾い、

Aを拘束してる
手錠と足枷を外す



音を立てて外れた
拘束具


『ぁ…』


細っこい身体に腕を廻し､
Aを抱き締める


『ｯ…離…､して…下さい…』


拙い言い方

胸板を押されるけど離さず
抱き締める力を強める


『汚れ､ます…､ょ…』

「だから?」

『…だか…ら…』

「A」


瞳に涙を溜めて
震えてる彼女を力一杯抱き締め、

耳元で囁く



「遅れてごめんね」

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