【赤羽業】私は……妖狐

妖3 ページ5

維波side

何時間泣いてたか分からない

けど…


『もぅ…治さなきゃ…』


言われた通りにしないとまた…殴られる…いつ迄も泣いてちゃ駄目

そう…判ってるのに…


『…ｯ』


涙が止まらない

止め様とすればする程…目から雫が零れ落ちる

衣服に落ちた雫はその場で消える

こんな風に私も…この地面に吸い込まれたら…こんな思い…しなくて済むのに…

再び阿吽が溢れる

足を動かせばｼﾞｬﾗｯと音を奏でる何か

首には､前人間が仔犬の首に付けてたワッカ

ワッカにはﾁﾘﾝと音を出すベルみたいな物

この音を奏でる“何か”は…重く､痛く､私の体力を奪ってく

このベルみたいな物は普段何ともないけど急に頭の中をｸﾞﾁｬｸﾞﾁｬにする様にﾁﾘﾝと音を奏でる得体の知れない物




何方にしろ…私を縛る物で…彼奴等の“物”が私に付いてある限り…私の主人は彼奴等…




此処はまるで鳥籠で…私は鳥籠に入れられた鳥




主人が許す迄…永遠に外へ出れない




ﾎﾞﾀﾎﾞﾀ 涸れる事を知らない涙





止まらない




私以外誰かが居る訳でもないのに…両手で…目を…顔を覆う

途端 扉の取っ手が回りドアが開く音

反射で顔を上げれば彼奴等じゃなく見知らぬ人


『だれ…?』


匂いで異獣ではなく人間だと判断

月明かりがこの部屋を照らし人間の姿が見える

綺麗な赤髪に
蜂蜜色の瞳



前の御主人と同じ様な香り



誰?前の御主人の遣い?

赤髪の人は目を見開くのをやめ「ハハッ」と声を出し笑う


「何?アンタ此処に閉じ込められてるの?」

『…はい』


入って来る赤髪さんから距離を取る

取っても取っても赤髪さんが近付いて来るから意味ないけど

距離を取り､私が動く度に足下でｼﾞｬﾗｼﾞｬﾗと“何か”が揺れ音が鳴る


「…酷い事するね」


赤髪さんが一旦立ち止まりﾎﾟﾂﾘ 呟いた


『……』


何で貴男がそんな表情(カオ)するの?貴男がされてる訳でもないのに…

赤髪の人がいきなり溜息を吐き後頭部を軽く掻く


「……此処から出してあげよっか?」

『…ぇ…?』


口角を上げ「此処から出たいんでしょ?」と確信してるみたいに訊いて来る赤髪の人

赤髪の人の質問に頷く


「おい!!ドアが開いてるぞ!!」


頷いた時耳に入って来た不快な声

彼奴等の内の誰かが様子見に来たんだろう

ボーと考えてれば突然体が浮く


「逃げるよ」

『ぇ…』


横に抱かれて少し混乱

「服に掴まってて」と言われ言われた通り赤髪の人の服を掴む



皺にならなければ良いけど…

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