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十五日目 ページ9

「シニガミ、寒いよ」

「……夏だぞ」

「気温は高くても、寒いよ」

タオルケットにくるまって、丸くなっても寒い。

「ねえ、シニガミ。一緒に寝ようよ」

私が手招きすると、彼は渋々といった様子で私の横に寝る。
背中に感じる温もりが、不思議な感じだった。

「……あったかい」

「……そうか」

「抱き締めてよ」

「こっちを向け」

シニガミの方を向く。
頭を抱え込まれ、視界が真っ黒になる。

「あたたかいか」

「うん」

零れ落ちた涙が、シニガミの着ている服を濡らしていく。

「あったかいよ」

大きな手が頭を撫でた。

「……なら、泣くことはない」

「そうだね」

嗚咽が抑えられなくなって、私はシニガミのお腹に顔を押し付けた。

「……俺では、駄目か」

切ないような声に、私は彼の身体を強く抱きしめた。

「……そんなこと、ないよ」

「いや、すまない。気を遣わせたな。今慰められるべきは君だったのに」

…………………………………………………


すっかり眠りに落ちたAを優しく見下ろして、シニガミは柔らかな髪に指を通した。

「……おれは、君の両親を殺した」

ぽたり、とシーツの色が濃くなる。
シニガミは自分の目元に手をやり、自嘲気味に呟いた。

「……俺に、泣く権利などあるものか」

眠っているAは、僅かに身動きして、赤子のように丸くなった。

「……父さん、母さん」

再び彼女に触れようとしていた手は、びくりと硬直した。

「……おいていかないで」

「…………わたしも、つれていって」

シニガミは、伸ばそうとしていた手を握りしめて、ベッドを抜けた。
もとより、シニガミには温もりなどないのだ。
ただ、彼女があたたかい、と思い込んでいるだけであり、常人にとってはむしろ、彼の肌は冷たく感じられるはずだ。

「……君に何一つ、与えられない」

温度でさえ。

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Niko(プロフ) - フォローさせていただきました......!こちらこそよろしくお願いします! (8月20日 18時) (レス) id: f73d5be156 (このIDを非表示/違反報告)
餅屋(プロフ) - Nikoさん» 作りました!きっかけを頂きありがとうございます!ご負担になった場合はフォロー外して頂いて構いません。よろしくお願いします! (8月20日 15時) (レス) id: 51ef15773f (このIDを非表示/違反報告)
Niko(プロフ) - 返信ありがとうございます、嬉しくて泣きそうです!もしアカウントをお作りいただけるのでしたら本当に嬉しいです......! (8月20日 13時) (レス) id: f73d5be156 (このIDを非表示/違反報告)
餅屋(プロフ) - Nikoさん» 無視して頂いて大丈夫です。もし需要があるようでしたらアカウントを開設します。いつも作品を読んで頂いて本当にありがとうございます。 (8月20日 3時) (レス) id: 51ef15773f (このIDを非表示/違反報告)
餅屋(プロフ) - Nikoさん» 良いかと思います。ただ、最新の物語が一番好きでいらっしゃるという貴方のような奇特な性癖の方(すみません)を、正直に申し上げますと逃すのは惜しいため、新しくアカウントを開設した場合に繋がらせて頂くことは可能でしょうか?ご気分を害してしまったようでしたら (8月20日 3時) (レス) id: 51ef15773f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:餅屋 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2014年3月18日 18時

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