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最終日 ページ13

「……A」

まるで天使のように慈愛に満ちた表情で、彼が私を見ている。

優しい手がそっと頬を撫でて、離れていった。

「死神と天使って、何が違うの」

そう言った私に、彼は笑った。

「どうだろうな。……見る側の違いかもしれない」
「?」
「死を受け入れている者には、死を知らせるものがおそろしくは思えないだろう」

私は首を傾げた。

「……じゃあ、君は、天使じゃないか」

温かい両手が、私の両頬を包んだ。

「違うさ。お前は死を受け入れたんじゃない。生きるのを諦めたんだ」
「……そんなに、変わらないんじゃない?」

彼は首を振った。

「全然違う」

彼は手を離し、一歩下がって名残惜しそうに私を見た。

「……君にプレゼントをあげよう」
「なに?」
「すぐにわかる」
「なぜくれるの?私が死ぬ日だから?」

彼はおかしそうに笑った。

「死没日プレゼントか。……違うよ。強いていえば、Aが好きだからかな」

彼は指を鳴らした。

パチン、と乾いた音が響くと同時に、






彼の顔に、腕に、ヒビが入っていく。

「……え」
「ご両親を君に返す。次に目が覚めたときには、君は元気に両親と暮らしている」

私は彼に手を伸ばした。
それでも、ひび割れた彼を壊してしまいそうで触れることは出来ずに手を止める。

「……シニガミは?」
「まあこういうのはお約束で、代償は俺の命だ。……でも君にとっての代償はない。起きたときには、俺の事なんて覚えていないだろうからな」

私は、無言で彼の手をそっとそっと包んだ。
彼は嬉しそうに微笑んで、言った。

「それじゃ、さよなら。……今度は人間らしい生活を送ってくれ」




彼が、砕け散ると同時に、目の前が真っ白になった。

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Niko(プロフ) - フォローさせていただきました......!こちらこそよろしくお願いします! (8月20日 18時) (レス) id: f73d5be156 (このIDを非表示/違反報告)
餅屋(プロフ) - Nikoさん» 作りました!きっかけを頂きありがとうございます!ご負担になった場合はフォロー外して頂いて構いません。よろしくお願いします! (8月20日 15時) (レス) id: 51ef15773f (このIDを非表示/違反報告)
Niko(プロフ) - 返信ありがとうございます、嬉しくて泣きそうです!もしアカウントをお作りいただけるのでしたら本当に嬉しいです......! (8月20日 13時) (レス) id: f73d5be156 (このIDを非表示/違反報告)
餅屋(プロフ) - Nikoさん» 無視して頂いて大丈夫です。もし需要があるようでしたらアカウントを開設します。いつも作品を読んで頂いて本当にありがとうございます。 (8月20日 3時) (レス) id: 51ef15773f (このIDを非表示/違反報告)
餅屋(プロフ) - Nikoさん» 良いかと思います。ただ、最新の物語が一番好きでいらっしゃるという貴方のような奇特な性癖の方(すみません)を、正直に申し上げますと逃すのは惜しいため、新しくアカウントを開設した場合に繋がらせて頂くことは可能でしょうか?ご気分を害してしまったようでしたら (8月20日 3時) (レス) id: 51ef15773f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:餅屋 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2014年3月18日 18時

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