Cabbage cradle 【ロミオ】(実話ネタです。) ページ34
「文化祭で焼きそば作って販売か、漫画じゃよくある立場だよな」
鏡を見ながら柔らかなくせ毛をバンダナへおさめるロミオが呟いた。
一通りまとめ終え、ピンで留め、2、3度回って確認し、支障が出ない程度に髪を少し出した。
自分はもともと武道系統のサークルなのでロミオのようなお洒落なクッキングスタイルなんて叶わず、額は丸出しの一般的な格好だ。
教育学部の家庭科室を模した小さな教室で、小学校のような丸椅子に腰掛け、壁にもたれると無意識にため息がでる。
椅子が小さくて膝が上がっているのが原因かもしれないが。
「おしゃれにしなくてもAは清楚なイケメンなんだから自信持てよ」
『そういうことじゃないー、ロミオはもう格好決まってんだから鏡見んなよ、手洗えって』
そうだな、と苦笑いして腕をまくる。
男の癖に細くて白い。女子が羨ましがってたことを思い出した。
教室後方の段ボールから彼はキャベツを二玉取り出す。
あんな爽やかな緑、誰も嫌いになるはずのないのに自分だけは何だか嫌悪感というか申し訳なく嫌がっていた。
うへぇ、と声が小さく漏れる。
『…キャベツ見たくない。』
「だってAの家がキャンパスから一番近い…」
『だからって全部俺のとこに置く奴ひどくね?』
文化祭が残り2週間に迫った今、 毎日毎日放課後は試作会だ。
食べ物を扱うので学内に置いたたままにすると問題が生じやすい。
そこで誰か一番近い生徒の家に保管しておこうというルールになった。
それが自分の部屋だった。
いざ運び出すとダンボールの数は予想をはるかに上回っていた。 多くて10箱かと思っていたが倍は超していた。
もはや部屋はキャベツの直売所だった。
「Aの部屋行った時さ、俺言葉にできないってこういうことかって思った」
調理器具を洗う水の音で彼の心情は分からない。 同情しているのか笑っているのか。
『 大学生、一人暮らし、ワンルーム、ザットイズ、狭い。』
「 ベッドの上にまで箱あったし、端という端にまであって、キャベツに囲まれて寝てたもんな」
『もうキャベツの魔人になっちまいそう!』
キャベツを切る心地いい音も自分には悲鳴をあげたくなるものだった。
『帰りてぇ、いや帰、ん、帰って、違う』
「今日俺の家泊まんな、 キャベツのゆりかごから出て、いい夢見ようぜ」
自嘲気味に笑う自分の口から、『さいこーう』とか細く声が漏れた。
Cabbage cradle の主人公の状況説明→←雨宿りbe our guest 2
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ルーネスガルディン - 死神のシャルロットだ。、、、此処は? (2016年6月13日 12時) (レス) id: e3be47b955 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白い屈み | 作成日時:2015年8月18日 15時