誉めない理由 【ペイラー榊】 ページ26
報告書を抱え、静かに入って少女はこちらをじっと見つめていた。
その表情は期待するようなものだった。
照明の光で彼女の瞳に輝きが増す。
「ふぅん、今日はなかなかじゃあないか。」
言い終わる途端にAは小さく手を震わせ、唇が「よし」の形に動いた。
私が彼女を誉めることはそうそうない。
同期のコウタくんやアリサくん等には毎日誉め称え、次回へもの期待も与える。
しかし、彼女に至っては自分の人柄が変わったように冷たくしてしまう。
「今日は、ね。」
口が何か言いたそうに開いては閉じ、いつものように目をそらす。
『確かに、今日はいつもよりかは…結合崩壊では希少な素材を、住民の救助も…』
『いつもより戦果は上々のはずですだから…!』
誉めてくれとでも言うのだろう。もちろんそんなことするわけがない。
本当は知っている。
Aくんは毎日訓練室で技術を磨いている。何度もそれを見てきた。
昼食の合間に資料を広げ、勉強していた。お行儀が悪いが努力として、認めた。
任務終了後、ビデオを見て戦法を見直している。
もはや努力の塊だ。しかし誉めてはいけない。
「君は独断専行が非常に多い、隊に迷惑をかけたこともあった。
強い正義感のあまり致命傷になりかねない怪我を負ったのは誰だ?君だね?
そしてその傷を調べたのは誰だ?私だ。君は他人優先が過ぎる。
小さな怪我が重なり最悪の事態へと繋がることが最上級の迷惑なのだ。」
「君を大切だと想う者はどれくらいいるか、分かるかい」
立ち上がり、彼女のもとへ歩く。言い過ぎが彼女にはちょうどいいのだ。
若いとは言えない男が近付くのが恐ろしいのか、一歩ずつ後退している。
手を挙げた。それを勢いにのせて、_____________壁へ。
片手と壁で彼女を覆う。
状況が理解できないのか、口を開閉させて短くえっ、と何度も言っている。
安心させるよう、落ち着かせるように、頬を包んで私は言った。
「よく頑張ったね、これからも私のものでありなさい。いいね?」
盲目の君に 【コウタ】《共作》→←私の方が! 【シエル アリサ カノン】
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ルーネスガルディン - 死神のシャルロットだ。、、、此処は? (2016年6月13日 12時) (レス) id: e3be47b955 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:白い屈み | 作成日時:2015年8月18日 15時