【GOD EATER】神機使いこれくしょん (ページ18)

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バレンタインの勇気《１》【ジュリウス・男主】ページ18

街に出れば、若い男女が仲良く歩いていた。
幸せそうな雰囲気とは逆に僕の心は黒い。そんなものさ。
東西南北恋人恋人恋人カップル、それをリア充と呼んでいる。
外出が好きな僕も今日だけは出たくない、と強く思っていた矢先、着信音が鳴り響く。
液晶には先輩、と表されていた。

「おはようA。お前、今日だけは出たくないと思っていただろう。」
『何で…』
「この密度の高いお前との二年間で分かってしまった。」

落ち着いた気品ある声の主はジュリウス先輩である。
彼はそもそも電話する相手が違う。あんなに綺麗なのに何で彼女いないんだ。
今ごろ、お似合いの女性とデートでも逢い引きでもするべきだ。
重い溜め息をついて頭を掻く。先輩は優しいけど変な所で怖い。

と思ったとき、玄関のベルが四回連続で鳴り響いた。

『怖いんですよ先輩は…連続で、四度も鳴らしますか普通』
「そうでもせんと出てこないだろう。」

特に今日のような日は外に出るべきだ。と腕を組んで説得する先輩。
バレンタインの今日、予想通り街は男女で溢れていた。

急な敗北感で目眩がする。視界の端で中学生のカップルも見えた。
負けた。そう口にして下を向く。

僕は内気で人見知りで、整容検査で引っ掛かった事がないとしか長所はない。
短所は泉のように溢れている。
日を追う毎に自己嫌悪は強くなる一方で何にたいしても消極的だ。

気づけば先輩の後ろを歩いていてこの位置でいいと思っていた。
再び溜め息をつくと、先輩は立ち止まる。案の定ぶつかった。

「今日はここに用がある。」

視線を追うと、僕は気が遠くなるのを感じた。嘘だろ。

女性がよく行くと思われる雑貨店だった。
ついでに桃色のハートマークが並び、もうやめましょうと言いたい程のカップル歓迎体勢。
でも、ほんの少し、心の一部で行きたいなんて言う僕がいる。

『もしかして、ですけど』
「ああ、知っていた。あの店員が好きなんだろう。」

その綺麗な手で差しのばした先にその店員さんがいた。
……ああ、何でもお見通しなんですね。