ライ・オン・ライ 【 九井一 】

28.朝9時の表参道で ページ28

.








物事全て突然だと思う、あなたは自分勝手な人だから。






.






土曜日、朝8時起床、カーテンの間から差し込んでくる太陽が眩しくて、目を細めた。







昨夜23時半、一件の通知、その内容はとても簡略化していて一目見れば要件がわかるものだった。








.









九井[ 朝9時、表参道]









.











｢……………………………は？？｣








.









多分、28年間生きてきた中で、1番間抜けな声が出たと思う。朝9時って、え？一時間後に表参道？嘘でしょ？この人は私の時間も予定も考えないわけ？








ああ、本当に自分勝手な人！三葉くんはいきなり予定とか組み込んでこないし、予定あるかどうか聞くべきでは？







まぁ、予定なんてないけど！！強いて言うなら、恋愛ドラマ見る気でいたぐらいだけど！








.







そうやって文句を心の中で垂らしながら、急いで準備をした。表参道までは大して遠くは無い、歩いて15分程度だけれど、準備には時間がかかる。







シャワー浴びて、化粧をして、髪の毛を巻いてって








別に三葉くんとデートでもないのに、なぜ私はめかしこんでいるのだろう。そんなことをふと考えた。








まぁいいや、あの人裏社会のくせに表歩けるんだ、なんてことを考えてしまう。








.









｢会ったら文句言ってやる、コノヤロウ｣







.







鏡で変なところがないかと確認をしては、少し回ってみる。よし、オッケーだ。時刻は30分前、余裕で間に合う。







遅刻したらなんか言われそうだけど、悪いのはあちら側だ。







その自分勝手なところは直した方がいい、友達出来なそうだもん、なんか。









.








急いで、ヒールを取り出して履いて、靴入れの上に置いてある鍵を片手にとっては、写真を見つめた。









─────── あなたに見せたかったな、今日の私を。








きっと君は私の大好きな笑顔で｢似合ってますね｣って褒めてくれて、目を細めて愛おしそうに見つめてくることでしょう。








.







涙が出そうになるのを堪えて、せっかくした化粧が落ちないようにと上をむく。









.










｢いってきます｣








.











空虚にそんな言葉を変わらずに投げていた。あなたに言われたかった｢行ってらっしゃい｣は今も聞こえないまま。









ただの無音が私の世界に響いていた。










.

29.This is the power of money！→←27.ココロはどこですか

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す