ライ・オン・ライ 【 九井一 】

20.ユメゴコチ ページ20

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今を思えば、それは夢だったんじゃないかってぐらい、彼だったと思うし、それは毒だったんだと思う。







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人を好きになるってどーゆーこと？







そうやってわからなかったコドモ時代の私に言えることなら、恋は毒だってことを教えてあげたい。








人を好きになる、人から好かれるってことは悪いことではない。多少は嫌なこともあるけれど、それは結局は悪い気がしないことだ。







だから、恋は毒なんだ、しなきゃ良かったって人は後悔をするから。









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｢……………………まだ、5分しかたってないんだ、変なの。｣









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連絡をしてからもう１時間経ったかなと思ってスマホを見ても、時間はまだ5分しかたってない。







待ち望んでいるのかもしれなくて







淡い期待を抱いていて、だからこそ、その感情に吐きそうになる。大バカだ、私は。










今からでも取り消しのメッセージは間に合う、なんて顔を上げたのなら、あなたがそこに居て







彼がそこにいて








ただ、世界が止まったようにも思えて。









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｢み、つばくっっ｣








九井｢外で待ってたんですか、中で待ってればよかったのに。｣








｢だ、って｣











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そこに居たのは、いつものカンフーコートを着ている訳でもなく










白い少しよれたシャツ





ちょっとダボッとしてるジーンズ





大きめの灰色のパーカー





少し汚れたスニーカー











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それらを身に纏う三葉くんがいた。







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三葉くんじゃないけど、三葉くんで、三葉くんの喋り方で、三葉くんの動作で、三葉くんの…………………









三葉くんの









温もりなのかもしれない。









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｢お、そいよ｣








九井｢道路混んでたんです｣








｢すぐ道譲るから｣








九井｢あっ、バレてた。Aさんは俺のことよく知ってますね｣








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ふわり微笑む彼の笑みが、そのものだったから、思わず私は







ガバッとするようにと抱きついては、彼の上に乗っかるようにと抱きついてしまう。







それと同時に










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私の目からは、涙しか溢れていなかった。







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九井｢Aさん？｣









｢…………っ｣











九井｢俺の家、行きましょっか｣











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撫でられる頭の温もりが夢みたいに感じた。








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