46.「絶対に消さない」 ページ46
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ドンちゃんと一緒にいて
沈黙が気まずいなんて思ったことがなかった。
髪色を変えた話をした途端に機嫌が悪くなったのはなんでだろう。
そういえばドンちゃんも髪色がまた少し明るくなっている気がする。
ちょっとだけピンクがかった茶色の髪が小麦色の肌によく似合ってる。
「その髪色可愛いね、似合ってる、かっこいい」
って今までだったら簡単に言えたのに、今の私にはすごく難しい。
髪色を変えたからと言って簡単に気持ちを切り替えられるわけじゃないことは分かっていた。
私はいつまでこんなふうに不毛な想いを抱えていなきゃいけないんだろう。
もう友達には戻れないのかな。
衝動的に逃げ出したい気持ちに襲われたけど、行き先は同じだからそれも叶わない。
無言で歩く駅までの数分がやけに長く感じた。
JN「Aおはよ」
『ジェノ！おはよう』
HC「俺もいるけど？」
JN「二人で来たの？」
HC「たまたま会っただけ、じゃージェノよろしく」
『あ、』
JN「行こうか、遅刻しちゃうよね」
『…うん』
別れ際、じゃあなと私の頭をくしゃりと撫でてドンちゃんはわざわざ離れた車両に一人で乗り込んでいった。
人ごみに紛れて見えなくなるまで後ろ姿を見ていたのに、
やっぱり振り返ることはなかった。
JN「写真で見たときから似合ってると思ってたけど、生で見るとより可愛いね」
『え〜、照れちゃうな、ありがとう』
JN「俺も染めようかな」
『私はジェノの黒髪好きだけど、…写真ってまさかジェミンが？』
JN「うん、Aの入ってないグループに突然送ってきた」
『なにそれ、知らなかった』
JN「ちゃんと保存しといたよ」
『盛れてるの以外は消してね』
JN「じゃあ一枚も消せないじゃん」
『全部消していいのに』
ジェノはにこにこ笑って「絶対に消さない」と言った。
私の写真なんか持っていても何の役にも立たないのに。
ジェノの考えていることはいまいちよく分からない。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年5月8日 2時
