40.「どんだけ心配したと思ってんの」 ページ40
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ジェノと行った水族館は久しぶりで楽しかったし、買おうか悩んでいたタコのぬいぐるみまで買ってもらった。
でも頭の中ではずっとドンちゃんとの思い出が浮かんでいた。
ジェノが優しく笑いかけてくれるたびに
心臓がぎりぎりと締め付けられるようだった。
中学校の頃、学校の行事で水族館へ行った。
そのころドンちゃんは軽い反抗期で、一緒に登校しているのに校内に入ってしまえばほとんど話してくれなかった。
水族館を回るグループが一緒になると、ちょっとだけ嫌そうな顔をしたことを今でもよく覚えている。
当日の朝に「迷子にだけはなるなよ」と連絡が来ていて、
それくらい直接言えばいいのにって、話しかけたくないのに心配はしてくれるんだって、
二つの感情で自分の気持ちがよくわからなくなった。
薄暗い館内で、水槽に夢中になって歩いているうちにグループのメンバーとはぐれてしまったことに気づかなかった。
館内で一番大きい水槽を眺めていると後ろから手を引かれ振り返ると、やけに焦った顔をしたドンちゃんがいた。
「A！！」
『え、どうしたの』
「迷子になるなって言っただろ」
『ごめん、…なんでそんなに怒ってるの』
「俺がどんだけ心配したと思ってんの」
『…ごめん』
「もう俺から離れんなよ」
『…』
「分かった？返事は？」
こんなに真剣な顔をして私の心配をしてくれるのなんて久しぶりで、
嬉しくて笑ってしまうと、口を尖らせたドンちゃんに「なに笑ってんだよ」とおでこをつつかれた。
二人であーだこうだ言いながら手を繋いで回った水族館は人生で一番ってくらい楽しかった。
だからジェノに水族館に行かない？と誘われた時は一瞬だけ断ろうかと悩んだけど、
ロンジュンが思い出は増えるだけだと言っていたから行くことにした。
行って良かったと思う。
あの日以来行ってなかった水族館は月日の流れで変わったところも多く、
懐かしいと感じるよりも新鮮な気持ちが大きかった。
そのおかげで自分もそろそろ変わらなきゃいけないんだと再確認出来たから。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年5月8日 2時
