37.「二人で」 ページ37
JN side
楽しい時間はあっという間で、もう帰りの時間になってしまった。
退屈な授業もこのくらい早く過ぎ去ればいいのに、世界はそう都合よく出来ていない。
四人掛けのボックス席の隣に座り窓の外を眺めるAと、正面でいつの間にか肩を寄せ合って眠るジェミンとロンジュン。
夏の日差しが得意ではないジェミンは疲労がかなり溜まったらしく二日目はとにかく眠そうでダルそうだった。
JN「朝いなかったけど、ロンジュナとどこか行ってたの？」
『散歩してただけだよ』
JN「どうして誘ってくれなかったの」
『だってジェノ気持ちよさそうに寝てたから』
JN「起こしてもよかったのに」
『そんなこと出来ないよ』
寝てる二人を起こさないようにこそこそと話す声と、
いつもと違うシャンプーの匂いがなんだかくすぐったい。
JN「夏休みの間にまた会いたいな」
『うん、花火もしたいし、みんなでお祭りも行きたいよね』
JN「それもいいけど、二人でも」
『ロンジュンとジェミンは仲間外れ？』
JN「うん、たまにはいいでしょ」
『私と二人でつまんなくない？』
JN「なんで？楽しいよ」
夏休みが始まってしまうとAに会う頻度はガクっと下がった。
Aも俺も、
もっと言えばジェミンもロンジュンも自分から遊ぼうとか会おうと誘うほうではない。
昨日と今日が終わってしまえば次に会う計画は経っていなくて、このままだと始業式になってしまいそうな予感がする。
去年は暇なドンヒョクが毎日のように連絡をしてきたおかげで、夏休みのほとんどをみんなと過ごしたけれど
今年からはそうはいかない。
どこ行く？なにする？とわくわくしたように行きたい所をいくつかあげるAに
「Aが好きなところだったらどこでもいいよ」
と言うと
「ジェノって本当に優しいね」と首を傾けて笑う。
その拍子に髪がさらさらと揺れた。
俺が優しくするのはみんなに対してじゃなくて、
Aにだけだってこと、
いつになったら気づいてくれるんだろう。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年5月8日 2時
