31.「去年は４人で行ったのに」 ページ31
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今日は３人と一泊二日でロンちゃんのおばあちゃんの家と近くにある海に行くことになっていて、楽しみでアラームが鳴る前に目が覚めた。
去年は４人で行ったのにな、と不意に余計なことが浮かんでしまったからぶんぶんと頭を振る。
３人におはようというスタンプを送り、いつもより丁寧に準備に取り掛かる。
汗と海水でどうせよれちゃうんだろうけど、どうしても気合いが入ってしまう。
くるんと綺麗に上がったまつ毛に、瞼に少しラメを乗せてみれば、なんだかいつもよりもちょっと可愛い気がして、
鏡の前でくるりと一回転をすればふわっと広がったワンピースの裾も似合っているように思えた。
早起きしたのに家を出る時間は迫っていて急いで玄関を飛び出すと、隣の家も同じタイミングで扉が開く。
『あ、』
HC「Aじゃん、どこ行くの」
『えっと、海』
HC「ジェノ達と？」
『うん、ドンちゃんは？』
HC「…俺は彼女と買い物」
『、そうなんだ』
HC「ねえ」
『あ！私遅刻しちゃうからもう行かないと』
HC「A！
ちょっと待てって」
ドンちゃんが私を呼ぶ声は聞こえていたけど聞こえないふりをして走り出した。
ドンちゃんと話すのは久しぶりで、上手く会話が出来なかったと思う。
別に緊張する必要も逃げ出す意味もないのに、
気づいたら足が走り出していたんだからしょうがない。
今どくどくと鳴る心臓の音の原因が走っているせいなのか、
ドンちゃんと話したせいなのか
分からなかった。
『ジェノ！』
JN「A！走ってきたの？」
『うん、楽しみで待ちきれなくて』
JN「そんなに急がなくてもまだ遅刻する時間じゃないのに」
走ったせいで崩れた前髪にジェノがそっと触れて整える。
「行こうか」と笑ったジェノが何も言わずに荷物を奪って歩き出す。
自分で持つよと言ったけど、
「行く前から疲れちゃったら楽しめないでしょ」と荷物を返してはくれなかった。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年5月8日 2時
