30.「うそつき」 ページ30
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ジェミンともロンジュンとも若干気まずくて、おはようの第一声を出そうとしたら声が裏返ってしまった。
当の本人たちはなんともない顔をして、
「喉の調子絶好調だな」とか「俺のA〜今日も可愛いね」だとかいつもの調子だった。
それが私を気遣ってくれていたのが分かったから何も言わなかった。
自分を取り巻く環境が少しずつ変わっているような気がするけど、まだ気づかないフリをしていたい。
『なんと』
RJ「早く言え」
『赤点回避しました〜！！』
JM「あいご！さすがナナのA〜！」
RJ「ジェミナのじゃないだろ」
『ありがと、みんなが勉強教えてくれたおかげだよ』
RJ「後半ほぼしんでたもんな」
『よく頑張ったよ、私』
RJ「自分で言うな」
JM「ジェノにも報告しないとね」
お昼の時間になりいつもの空き教室に向かいながら、去年のことを思い出していた。
去年はみんなでテスト勉強を頑張っている時に、
集中力の切れたドンちゃんが騒ぎ出してロンジュンとマク先輩に怒られてたっけ。
テスト前もテスト期間中も集まっていたのにその成果は出ずに、私とドンちゃんは二つ赤点を取った。
今年は騒ぐ人がいないから勉強ははかどったし赤点だって回避できたのに、
何か物足りなくてどこか寂しく感じてしまう。
高校一年生の夏休みを少しを無駄にした憂鬱な補習も、ドンちゃんがいたから楽しみで、楽しかった。
考え事に頭を巡らせていると、横から伸びてきた手が私の頬を掴む。
JM「何考えてるの」
『何にも』
JM「うそつき」
RJ「どうせ今日のパフェをいちごにするかチョコにするかで悩んでたんだろ」
『惜しい！今日はパンケーキにしようかなって考えてたところでした〜』
RJ「はあ」
JM「本当に？」
『本当だよ』
手を離して顔を覗き込み、まだ疑うような視線を向けてくるジェミンの頬をむにっと掴んでにっこりと笑顔を作れば、
納得のいかない顔のまま離れていった。
教室のドアを開けるとジェノがいてゆるゆるとこっちに向けて手を振る。
口には出さないけど、その姿は飼い主を待っていた犬のように見えた。
この場合飼い主は誰だろう。
「ジェノ！聞いて！赤点なかったんだよ！」と言えば、
「よくできました」と言って頭を撫でてくれた。
これじゃあどっちが犬かわかんないな。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年5月8日 2時
