22.「俺がずっとそばにいてあげる」 ページ22
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ドンちゃんが好きな人なら私だって好きになれると思っていたのに、今までだってそうしてきたのに、
どうしてもあの子と仲良くなろうと思えなかった。
笑いかけて仲良くなりたいとまっすぐに伝えてくれて、体調が悪いと逃げ出した私にも優しく声をかけてくれるそんな子なのに。
きっとドンちゃんの彼女じゃなかったら仲良くなれたと思う。
でも、ドンちゃんの彼女っていうだけで顔も見るのも苦しい。
あの子がもっと嫌な子なら良かった。
そうだったらドンちゃんに別れたほうがいいよって、なんであんな子なのって言えたのに。
ドラマや映画で見た恋はもっと毎日が楽しくてきらきらと輝いて、たまに泣いたりしてたけど、主人公もみんな幸せになっていたのに、
私に浮かんでくる感情は醜くて汚くてずるい。
こんなぐちゃぐちゃな気持ちになるなら恋なんてしなければ良かった。
「A」
『うん』
「仲良くしたくないならしなくていいよ」
『でも、』
私の言葉を遮るようにジェミンがゆっくりと首を振る。
いつも距離の近いけど、こんなに近くにいると長い睫毛がはためく音まで聞こえる。
低いジェミンの声が触れた体の奥から響いて、ドクドクと鳴る心臓の音は私のものかジェミンのものか分からない。
黒い瞳の中に情けない自分の姿が見えた。
ぼろぼろと零れる涙をジェミンの丸い指先が優しく拭うからくすぐったい。
「Aが嫌なら無理しなくていいんだよ、俺がずっとそばにいてあげる」
『、ジェミン』
「俺はAが何をしても味方だよ」
背中に回った手がぽんぽんと一定のリズムを刻む。
子供みたいな体温が私のとがった心を少しずつ溶かしていくような気がした。
ジェミンは優しい。
でも優しくされればされるほどに自分の小ささを感じて嫌になった。
なんて我儘なんだろう。
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作者名：ロク | 作成日時：2022年5月8日 2時
