21.「仲良くなんて出来ない」 ページ21
JM side
校庭の隅にAと二人で座り込んで、準備に行ったロンジュンを遠くに眺めながら野次を飛ばす。
Aの肩には準備を行く前にロンジュンが
「座ってると寒くなるだろ、ジェミンに返して俺の着とけ」
ってかけていった“ファン”と名前の入ったジャージがかかっている。
それがなぜだか少しだけ気に食わない。
後ろから女の子がAを呼ぶ声が聞こえて振り返ると、そこにはドンヒョクの彼女がいた。
柔らかく笑ったその子に対して、
強張った顔のAが俺のジャージの裾を見えないようにぎゅっと握った。
「ドンヒョクから話聞いてて仲良くなりたくて」
『、そうなんだ』
「仲良くしてくれる？」
『…えっと』
「ドンヒョクの話したいなって思ってて」
『………』
「Aちゃん？」
隣に座ったAの頭がどんどんと俯いていき、瞳にじわじわと涙が溜まっていくのが見えた。
仲良くするのはともかく、ドンヒョガの話がしたいって何を考えてるんだろう。
この子は何も知らないのか、それとも意地悪のつもりなのか。俺には関係ないけど。
JM「あ〜〜〜、A今日体調悪いの、ごめんね」
「そうだったの？私こそごめんね、そんなときに話しかけて」
JM「ううん、大丈夫、じゃあA保健室行こう？」
Aの小さい手を引いて立ち上がらせる。
「大丈夫？」と心配そうに声をかけてくるこの子はきっと本当に悪い子ではないんだろうな。さすがのドンヒョガでもそんな子だったら付き合わないか。
『大丈夫』というAの声は震えていて、泣き出す５秒前くらいかな。
保健室に行こうと思ったけど誰かに見られるのも嫌で、いつもお昼を食べている空き教室に向かう。
誰もいない教室でAの子供みたいな小さな泣き声が響く。
「A」
『仲良くなんて出来ないもん』
「そうだねえ」
『できないもん』
抱きしめた華奢な身体をつたって、Aの震える声がダイレクトに聞こえる。
出来るだけ優しく頭を撫でながら、
ああ、これはまずいなあと思った。
俺にとってのAは、可愛くて感受性が豊かで優しい子で、まっすぐにドンヒョクしか見えていない。それがどこか危なっかしくてほおっておけない。
俺には兄弟がいないけど、もし妹がいたらこんな感じだったのかなって、そう思っていた。
でも、Aの涙が床にポタリと落ちた瞬間に
これが恋だと気付いてしまったんだ。
.
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作者名：ロク | 作成日時：2022年5月8日 2時
