【ツイステ】捕食者。【男主】

硬貨42枚 ページ43

ラギー「A」




とっくに日は沈み、就寝時間へと近付くサバナクロー寮。淡い光を灯す談話室でペンを走らせていると、背後から聞き慣れた声がした。
声の主はラギーで、優しさと怒りを含んでいた。




ラギー「目の下の隈。…寝てないでしょ」


『ん…寝てるよ』




目の下を指でなぞられる。
アイメイクは施したが、そんなんじゃ幼少期を共にしたラギーを騙すことなんてできなかった。



口では"大丈夫"なんて言っていたが、少しだけ足元もおぼつかなかったのを見逃さなかった。




ラギー「寝てない。はぁ〜今日は俺の部屋、分かったッスか？」


『えぇ〜…』


ラギー「返事は？』


『ふぁい…』




引きずられるようにラギーの部屋へと入る。



近頃寝ていないのは事実。借金返済のことで色々切羽詰まっていたからだ。
あと少し、あと数日頑張ればこんなことから身を引ける。




欲を言うならばもう少し欲しいところだが、完済が第一目標。暮らしているのは祖父母と母親だけだし食費には困らないはず。貯金でどうにかならないか、とか。




どうしてこうも自分は振り回されているのか。




世間一般なんてわからなかった。自分の生まれ育った場所は誰もが貧しく、金のない者は身分が上の者に媚びへつらってお溢れをもらっていた。
それが普通だと思っていた。



"若いのに大変ね"
今まで何度聞いた言葉だろう。今になってよくわかる、若くして身を削るだなんてのはおかしい。普通じゃありえない。




『お夜食持ってかないの？』


ラギー「とっくの昔に運んでるッス。弟が心配なんでーって」


『心配御無用だけど』


ラギー「はいはい、寝るッスよ〜」




抱えていたノートはラギーの手によって没収され、無理矢理ベッドの上へと乗せられる。
暗い中見えた表情は悲しみで満ちていた。




ラギー「もしも、俺が、今ここで抱いたら、Aの重荷は軽くなる？」




小さい声。それでも真横にいるAには十分の大きさだった。




『…さぁ、額によるね。』


ラギー「………拒まないんスか」


『なぁにそれ、恩を仇で返せっていうの？…拒むのは兄ちゃんの方じゃない？損だよ、こんな額払って何も得るものが無いんだから』




月明かりに照らされたAの顔が緩む。




自分を救ってくれた人。幼い頃食料を分け与えてくれた人。
拒めないし、拒む気なんて微塵もない。それほどラギーを大切だと思っているから。




ラギー「……ま、残んのは虚無感だけッスかね」

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