硬貨40枚 ページ41
『人を虐げることでしか自尊心を保てないだなんて哀れだよねぇ』
ユウ「…仕方ないよ、僕は異質だから」
『だとしても圧倒的な差がありながら集団で挑んでる時点で向こうは負けてるよ』
2人しかいない保健室。
Aはハンカチを洗いながらそう答えた。
人を殴ったところで生まれるものなんて何もない。そもそも、だ。何もしてないユウが殴られていい理由がない。
殴るやつは殴られる覚悟がないと。無い奴は、嘆きながら尻尾を巻いて逃げていく。
歳上だからって偉そうにしておいて、変な歩き方をして帰ったのは面白かったなぁ。
『制服も汚れて…学園長サマにお願いして予備のもらう?』
ユウ「いいよ、もう週末だし」
『…それもそうだねぇ』
あの人だったらこと細かく理由を聞いておいて貸してくれないかもしれない。
優しいとは言えど他人事なのは事実。まぁ心配もかけられないとユウは思ったのだろう。
何で何で、と聞くのはあまりにも幼稚。そう判断し、Aはそっと微笑む。
本来の色を取り戻したハンカチにドライヤーの風を当てて簡単に乾かす。
電源を切ると今度はユウの方から口を開いた。
ユウ「なんか、Aくんの暴力は正義に見える」
『…まぁ、先に手出したら負けだからねぇ』
ユウ「スカッとしちゃった。僕の代わりに殴ってくれてありがとね」
今まで何度か庇ったことはある。見るに耐えない状況だったから。
でも、感謝されるのは初めてだった。今度は自分が殴られるかも、と皆逃げてしまう。
不審がって顔を見るも、とても嘘をついているようには見受けられない。まぁユウは嘘をつかないバカって噂も耳にするくらいだし………?
ユウ「どうして助けてくれたの?」
そう尋ねるユウに、Aは目を逸らして言った。
『……黒は、どんなに頑張っても白にはなれないでしょ』
もう自分は黒く染まってしまったから。
やり返したりなんかしたらユウが黒色に染まっていってしまう。それを恐れて手を差し伸べた。
ユウ「Aくんは黒くない。だって全ての行動の裏に理由があるじゃん。」
初めて言われた言葉に面食らう。
なんだか自分を正当化してくれている気がして心が軽くなった。
『…人間サマって感性独特』
ユウ「そうかな?」
『…ありがとね』
恥ずかしそうにそう言うAに首を振った。
両者、帰路に着く足取りが軽かった。
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しお(プロフ) - 完結おめでとうございますっ作者様の作品どれも大好きです!!ほんとにどタイプです(; ;)新作も楽しみにしています!頑張ってください! (2020年8月17日 18時) (レス) id: 555d662f3a (このIDを非表示/違反報告)
ぱるこ氏(プロフ) - 完結おめでとうございます!!すっごく読んでいて楽しい作品でした!またどこかで貴方様の作品に出会えますように(^ν^) (2020年8月16日 22時) (レス) id: f3351ce51f (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - とても面白いです。この作品が更新されるのを毎日心待ちにしてます。更新大変だと思うので作者様なりのペースで頑張ってください!応援してます。 (2020年8月7日 22時) (レス) id: 9f253d2950 (このIDを非表示/違反報告)
諒(プロフ) - イライ&ナワーブさん» ご指摘ありがとうございます!お手数ですが、誤表記の話数をお教えいただけませんか? (2020年8月7日 22時) (レス) id: 20c69aa8ad (このIDを非表示/違反報告)
イライ&ナワーブ - とても面白いと言うかBL最高! (レオンではなくてレオナですよ) (2020年8月7日 21時) (レス) id: 1da65a8f09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:諒 | 作成日時:2020年8月2日 13時