硬貨39枚 ページ40
焦燥感で汗が吹き出す。ユウは痛む体を引きずりながら逃げ、中庭の大きな木に背を預ける。
まさかこんなにも生徒の反感を買っていたとは。
気に入られていないのは入学当初から知っていたが、未だに根強く嫌っているやつがいるらしい。そんな生徒らに、ユウは暴力を受けていたのだ。
ユウ「う、わ…鼻血………ど、しよ、」
じわり。ハンカチの紅と共に涙が滲む。元いた世界でもこんな経験なかったし、身近にもいなかった。
どうしたらいいんだろう、相手は魔法が使える。仮にジャックやデュースみたいに強くたって勝てっこない。
逃げるような余力もないし、手当する術もない。グリムは何処にいるかわからない。助けを求められるような先輩なんているか？
ぐるぐると頭を回すも、名案は浮かばなかった。
ここなら誰か見つけてくれるかな、倒れても大丈夫か。
覚悟して目をギュッと瞑ると、後ろから弾んだ声がした。
『何何、楽しそー！僕も混ぜてよ！』
楽しそうに笑い、ユウの手を引くA。
すぐに軽度の治癒魔法をかけて、少し離れたベンチに座らせた。
わけもわからずただAを見つめていると、ウインク1つ落として彼らの中へと混じっていった。
『活きのいいお魚が3匹〜！ヒャハ、今日はご馳走かなぁ〜？』
尻尾を揺らし嬉しそうに足を進めると、相手は嫌そうな顔をした。
そりゃそうだ、ストレス解消のためにやっていたことをAが中断してきたのだから。
「おいおい1年、邪魔すんなよ、冷めんだろ」
『えっ先輩だったの？歳上なのにまともに狩りもできないだなんて可哀相…！僕が教えてあげる！』
「こっの、クソガキ！」
『負け犬ほどよく吠えるって言うよねぇ』
したり顔で微笑み、地面を蹴る。
それからはすぐだった。小柄なAがあの手この手でやり返し、オクタヴィネルの生徒らは散っていった。
手についた血をハンカチで雑に拭い、ユウの前にしゃがむ。
驚きで涙は引っ込み、いつの間にか鼻血も止まっていた。
『偉いねぇ、仕返ししないだなんて』
ユウ「しないんじゃなくて…できないんだよ」
『それでも手出さなかったのはすごいよぉ。僕だったら指噛みちぎっちゃうかなぁ』
手袋をつけて、ユウの頭を撫でるA。
血のついた手じゃ汚くて触れないから、というAなりの配慮だった。
垣間見えた優しさに、ユウは笑みを浮かべた。
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しお(プロフ) - 完結おめでとうございますっ作者様の作品どれも大好きです！！ほんとにどタイプです(; ;)新作も楽しみにしています！頑張ってください！ (2020年8月17日 18時) (
レス) id: 555d662f3a (このIDを非表示/違反報告)
ぱるこ氏(プロフ) - 完結おめでとうございます！！すっごく読んでいて楽しい作品でした！またどこかで貴方様の作品に出会えますように（＾ν＾） (2020年8月16日 22時) (レス) id: f3351ce51f (このIDを非表示/違反報告)
あお(プロフ) - とても面白いです。この作品が更新されるのを毎日心待ちにしてます。更新大変だと思うので作者様なりのペースで頑張ってください！応援してます。 (2020年8月7日 22時) (レス) id: 9f253d2950 (このIDを非表示/違反報告)
諒(プロフ) - イライ&ナワーブさん» ご指摘ありがとうございます！お手数ですが、誤表記の話数をお教えいただけませんか？ (2020年8月7日 22時) (レス) id: 20c69aa8ad (このIDを非表示/違反報告)
イライ&ナワーブ - とても面白いと言うかBL最高！ (レオンではなくてレオナですよ) (2020年8月7日 21時) (レス) id: 1da65a8f09 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：諒 | 作成日時：2020年8月2日 13時
