【QK】透明色の感情を愛と呼ぼう【ymmt】

愛を置いて夢に踏み出す ページ49

就職活動に失敗して、半ば不貞腐れた気持ちで就任した臨時店長職。今まで同じ立場だった学生時代の友達は立派に社会人をやっているのに、どうして自分だけ。そんなことばかりを考えて、毎日が自己嫌悪の連続だった四月。

「…そっか。就職先、決まったの？」

落ち着いた彼の声とともに、ニュース番組のエンドロールが流れ始めた。

「いいえ、就活はしないことに決めました。」

恋人はいなくなって、友達とは疎遠になって、自信まで失って。挙句の果てには、散々な人生だと自虐までしてしまって。そんな惰性で生きる毎日の中で、唯一の楽しみは大好きなあの人たちの動画を見ることだった。無機質で単調な日々を送る私の生活を彩ってくれているのは、彼らと言っても過言ではないほどに。

そんな彼らと出会ってからの日々は、疑う暇もないほどに目まぐるしくて、本当に夢のようだった。輝き続ける彼らとこの場所を通して関わり、言葉を交わすことで、私自身の見ている風景が鮮やかに彩られ始めた。好きな自分に出会うことが出来たし、心の底から惹かれる人物に恋もした。

「私、目標が見つかったんです。」

華やかなポップミュージックとともに、スーツを身に纏う彼らが映し出された。その表情は少しばかり強張っているも、瞳には輝きを灯している。

「たくさんの人の心の支えになるような、バーテンダーになりたくて。」

私はこの仕事が、気付けば大好きになっていた。そう思わせてくれたのは、間違いなく彼らのおかげである。彼らの存在が私の支えだったように、今度は私が誰かの支えになりたい。こんな私にも、大きな夢が出来たのだ。

「だから私、留学しようと思ってるんです。」

より高みを目指したいという思いに、嘘はなかった。一年前に探していた就活先とはジャンルも方向性も全く違うけれど、今なら胸を張って、これがやりたいことであると言える。

番組は出演者紹介に切り替わり、漢字王と称された山本さんが画面一杯に映し出された。深いお辞儀をするところが、相変わらず彼らしい。

…欲を言ってしまえば、これが叶えたかったことの全部ではないんだけどさ。もう一つの願いは、そっと胸の内にしまっておこう。

彼は私の言葉を、一つ一つ噛み締めるように相槌を打っていた。それはまるで教え子の話を聞く教師のように、優しくて温かくて。

「行ってらっしゃい。応援してるよ。」

スピーカー越しでも伝わる熱を帯びた言葉に、私はそっと微笑んだ。

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