【QK】透明色の感情を愛と呼ぼう【ymmt】

トゥルーエンドに向かって ページ46

想いを伝えることを、しようとは思わなかった。

まして今は、告白と言うリーチが懸かっている。あれから少し日は経っているから、もしかしたら既に結論を出しているかもしれない。こんな状態で挑む勝負師の技量を、私は持ち合わせていなかった。そしてそれは、先手を打った女性にも失礼だろう。私にとってのハッピーエンドは、きっと物語の本当の結末ではないから。

だからトゥルーエンドへと、向かうために。

「お待たせ致しました。」

きっと暗に気持ちを込めてしまうのは、私の中で感情が未だ消化出来ないからだろう。

「ブルームーンでございます。」
「わあ、綺麗…！」

グラスを差し出すと、彼はその色を見て感嘆の声を上げた。

ジンリキュールをベースに仄かに柑橘系の香りを匂わせるそれは、静かな夜空に溶けるように爽やかで、純粋な青色をしている。

「青色の飲み物なんて、初めて見た。」
「ふふ。カクテルでしたら、幾つかございますよ。」

彼は興味津々という感じでグラスを見渡すと、やがてスマホを構え出した。確かにこの色は写真映えするだろう。現に、若いお客さんが写真を撮る光景なんて日常茶飯事である。

そんな見慣れた光景なのに、特別に感じてしまうのは何故だろう。画面を見つめる彼の瞳は、透き通っていてとても綺麗だった。それは視線を奪われている自覚がないくらいに、無意識的に夢中になるほどで。数回のシャッター音を超えると、彼は満足そうに顔を上げた。

「本当に素敵な色。ありがとう、Aさん。」

その瞬間、二人の視線の先が結び付いた。脳内に、閃光のような刺激が走る。

彼と出会って、私は間違いなく成長出来ている。自分が思う良い方向へと成長したし、素敵な明日へと日常が変わっていく。そんな日常が連続したら、きっとこの先の未来は明るいんだろうな。こんな短期間で、退屈なんて言葉を忘れてしまうくらいだから。

毎日が変わっていくことで、何だか少しだけ自分のことを好きになれた。その原動力となったのは、間違いなく山本さんである。

きっと私は、山本さんのことがどうしようもなく好きなんだろうな。

「此方こそ、いつもありがとうございます。」

そう言って、私はいつもと変わらぬ微笑みを浮かべた。

彼がその告白を受けるかどうかは、もう既に問題ではなかった。自分が想いを伝えるかどうかも、今となっては命題ではなかった。私は何だか、もっと漠然とした、エンドロールのその先を見据えているのである。

決意に続き時は流れる→←変化が見える不変の兆し

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す