【QK】透明色の感情を愛と呼ぼう【ymmt】

愛はあっても他愛のない話を ページ18

「好きです。お酒に限らず、甘いものに目がなくて。」

そんな私の魂胆に気付くはずもない彼は、問いかけに対して丁寧に言葉を返してくれた。アルコールが入ったからか、声色がさっきより明るくなっている。

「そうなんですね。ここの二階にあるケーキ屋さん、お勧めですよ。」

そう言って偶然置いていた店のチラシを見せると、彼は大きい瞳をさらに輝かせた。

「わあ、美味しそう…！」

甘いものが好きなことは、当然既知の情報である。この前はパフェが食べたいと呟いていたし、彼のツイッターのヘッダーは長いことケーキの写真から変わっていない。

「最近、スイーツ巡りにハマってるんですよ。」

そう言うと彼は、自分のスマホから幾つかの写真を見せてくれた。写真の中にはスイーツとともにこうちゃんが映っているものも数枚有り、私は心の中でひっそりと歓喜の声を上げていた。プライベートでも仲が良いと有名な二人だけど、本当に一緒に遊んだりするんだな。写真に映るこうちゃんはインスタ映えを狙う女子大生よりもキラキラしていて、私はすぐにでも自分の端末に保存してしまいたかった。

それから三十分ほど経っただろうか。最初の話題から二転、三転と話が弾み、私たちはすっかり世間話を楽しんでいた。絶えず笑顔で話を続ける彼は、本当に可愛くて魅力的で、目に入れても痛くないほどであった。

「…あ、そういえば。」

出来たてのアヒージョを頬張りながら、彼は何かを思い出したように呟いた。二杯目に頼んだレゲエパンチは、さっきのそれと比べて格段に透き通った色をしている。

「Aさんって、おいくつなんですか。」

彼から呼ばれる名前は、今まで出会ったどんなものよりも私の心を和ませた。昨日の常連さんがそう呼んでいたのを、彼らは耳にして、そして覚えてくれていたらしい。

「…すみません。お若いだろうと思って、つい。」

形は違えど、これは認知だろう。しかもヲタ垢の辺鄙な名前なんかではなくて、しっかりとした本名で。

「いえいえ、全然。今年で23になります。」
「え…！僕、24なんです。近いですね。」

私の言葉に、彼は目を丸くした。まさか自分より年下だとは思っていなかったのだろう。年相応な顔立ちのはずだが、どうもこの仕事で培った落ち着きが、私を数年年季が入ったように見せているらしい。

「すごいなあ、23歳で店長さんだなんて。」
「いや、そんな。」

…私、代理だしね。まあ推しの手前だし、少しくらい見栄張ったって良いか。

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