【QK】透明色の感情を愛と呼ぼう【ymmt】

終わらない夢の続き ページ13

カーテンの隙間から差し込む太陽の光と、湿気に満たされた嫌な暑さで目が覚めた。そのじっとりとした空気があまりにも不快で、私はベットに横たわったまま空調のリモコンに手を伸ばした。

目まぐるしく過ぎた日は正式に昨日となった。家に着いてから、すぐに寝ちゃったんだっけ。辛うじてベットに乗っている身体は制服を着たままで、髪は何だかベタベタしている気がする。それに加えてメイクをしたまま寝るなんて、二十代前半の女がやることではない。昨日はあんなに綺麗でいようと誓ったのに、こんなんじゃきっと三日坊主も呆れてしまう。さっさと洗顔してお風呂に入って、出勤に向けて準備をしないと。

そう思っているにもかかわらず、私は枕元に置かれたスマホを拾い上げた。相変わらず何の通知もないロック画面には、昨日出会ったはずの彼らの、初テレビ出演時の画像がはっきりと表示されている。

何気なくインスタグラムを開くと、スーツを纏う学生時代の同級生たちが飲み会を楽しむ投稿が目に入り、何だか気が滅入ってすぐにアプリを閉じてしまった。みんな一人立ちして、社会人として立派に生きているんだな。フリーターの身分になった私を、昔からの友人たちは気にせず仲良くしてくれるけれど、やはり日が経つにつれて劣等感を感じて距離を置くようになってしまった。プライドなんて、とっくに捨てたと思っていたのに。

他人の生活を羨んでいないでさっさと準備をすれば良いにもかかわらず、次は青い鳥のアイコンへと無意識に手が伸びていく。まさにソーシャルメディアへの無自覚な依存である。そう言えてることが出来る時点で、無意識でも無自覚でもないのかもしれないけれど。

友達と有名人を纏めてフォローしているリア垢であり趣味垢のタイムラインを流すようにスクロールしていく。取り立てて面白い何かがあるわけではないが、この一切生産性の無い時間は全くもって嫌いではない。

ぼんやりとそんなことを考えながら羅列された言葉を辿っていく。そんな中表れた一つの呟きに、機械的に動かしていた手は止まり、無意識に口角が吊り上がった。

「…山本さん。」

文章とともに添付された画像には六人分のグラスが写り、液体は橙色に染まっている。これは昨日、彼らに一杯目に出したベリーニに違いない。加えて写り込んだテーブルの形や質感から、私の店を指していることは確かだった。

『素敵な店長さんがいるお洒落なお店に行きました。これから通おう。』

顔も心も色彩を纏う→←夢も期待もテーブルに乗せて

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