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エレベーターが開くのと同時に走って部屋の鍵を開けて。
玄関のドアを背にしてへたりこんだ。
「…はぁ、な…んなのあの人」
カズさんへの想いがバレた事もショックだったけど、それよりも自分の演技が見破られたことが悔しくて。
今までに会ったことのないタイプの人間に動揺がおさまらない。
それともう一つ心に残るのは、
「手、思いっ切り引っ掻いちゃったな…」
指に残ったその感触に罪悪感が募った。
「あの、カズさん」
「ん？」
「大野さん…のことなんですけど、」
「あのおっさんが、何？」
次の日に現場で会ったカズさんに恐る恐る声をかける。
はじめは穏やかだったのに大野さんの名前を出した瞬間にその表情が一変して。
鋭い視線に射抜かれて言い淀んでしまう。
「あ、いや…えっと…不思議な人ですね」
本当は大野さんが私について何か言ってなかったか聞きたかったけれど、どうにもそれを聞けるような雰囲気じゃなくて。
当たり障りのないことを言って誤魔化してしまう。
「……まあ、うん。昔からそうだよ」
何を思い出したのかクスッと笑ったカズさんの横顔が綺麗で見惚れていると、
「なぁーに、そんなに俺の顔見て。イケメンで見惚れちゃった？」
「…まさか。美形なら見慣れてますから」
図星を指されてうろたえても、口から出るのは強気な嘘。
カズさん相手ならいくらでも嘘がつけてしまう自分が嫌になる。
「だよなぁ、お前はそうだと思った」
再び台本に目を落としたカズさんにバレないよう、溜めていた息をそっと吐く。
嘘と誤魔化しに塗れた胸が、ギリギリと痛むのにも慣れきった。
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紫苑(プロフ) - yukidarumakunさん» あとがきにも追記しましたが、この二人のその後を短編で書き始めました。ぜひ覗いてみてくださいね。 (2020年6月7日 16時) (
レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
yukidarumakun(プロフ) - ものすごく楽しみです！またこの2人に会えるのを楽しみに日々の生活頑張ります。こんな時期ですので御無理のないよう創作して下さいね。 (2020年6月6日 19時) (レス) id: b586aa50e6 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - yukidarumakunさん» 労いのお言葉ありがとうございます。この後の二人については少し考えていることがあるので楽しみに待っていてください！続きを書いた時にはまたこちらでお知らせしますね。 (2020年6月4日 12時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
yukidarumakun(プロフ) - 完結お疲れ様でした。この後の2人も見たいですね。また、いつか続編読ませて頂ける日を楽しみたいしています。 (2020年5月31日 19時) (レス) id: b586aa50e6 (このIDを非表示/違反報告)
紫苑(プロフ) - めぐぽん(*´･∀･)さん» コメントありがとうございます。楽しみと言って頂けて嬉しいです。更新頑張りますね！ (2020年5月26日 23時) (レス) id: 217cb95def (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：紫苑
| 作成日時：2016年12月14日 22時
