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第194話 ページ8

やがて完全に濁りが取れた霊力は、自分のものとは思えないほど澄んでいて、まさか澪ちゃんが浄化をやりすぎたのではないだろうか、なんて不安に思ってしまう。
けれど、満足げに頷いた澪ちゃんの手によって霊力が体に戻されると、そのよく馴染む感覚が、紛れもない僕の霊力であることを告げていた。


「どう?よくなった?」

「…なんというか、あんなに綺麗なものが僕の霊力なんて、ちょっと不思議な感じ」

「そうだな、お前の霊力は綺麗すぎる。
そういうところ、しっかり母親の力を受け継いでいるな」


胸に手を当てて、じんわり広がる熱に眉を下げて笑うと、椿さんが呆れたように息を吐いた。
僕を中継したとはいえ、同じように睡蓮たちの霊力を取り込んだはずの椿さんも元帥も普通にしているので、やっぱり僕が異質なのかもしれない。

というか僕の場合、遡行軍で最悪な日々を過ごしていたのに、ここまで澄んだ霊力を維持していることがおかしいのか…いくら母様の霊力を受け継いでいるとしても…

それはそれで複雑だな、なんて考えつつ三日月と「降ろして」「降ろさない」と問答を繰り返していると、そんな様子を見ておかしそうに笑う椿さんが一歩こちらに近づいた。


「とにかく、ようやくこの審神者失踪事件の黒幕が捕まったんだ。あとの処理は私たちに任せて、お前は本丸に戻って休め」


ぽんぽん、と優しく椿さんに頭を撫でられて、少し恥ずかしい気持ちになりながら俯く。
…本当に、これで終わったんだ。


「睡蓮たちの尋問が終わり次第、私たち討伐課が、審神者が連れ込まれたと思われる遡行軍本丸に調査に行く。そこでの調査の状況はお前たちにも共有していくから、安心しろ」

「…椿。どうか…よろしく頼む」


頼もしく自信に満ちた笑みを浮かべた椿さんに、三日月が浅く頭を下げる。
そうだ…三日月たちの初代も、もしかしたらそこに閉じ込められてるかもしれないんだ。

といっても、彼らの初代審神者が消えたのは、今から十五年も前。
生存している可能性は、限りなく低い。
きっと三日月も、そのことはちゃんと理解している。
それでも…最後の望みに託したいという気持ちに、水は差せない。

そのことを椿さんも感じ取ったのか、口元を引き結び、どこか切なそうにしながら「あぁ」と言葉少なに頷いた。

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寒蘭(プロフ) - レイラさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて嬉しい限りです(*´Д`*)これからも頑張ります!! (4月18日 18時) (レス) id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
レイラ(プロフ) - 初コメ失礼します!結論から言うと泣きました…。いやもう、設定から二代目の事からすごくよく考えられてて凄いなと!!!久しぶりに一気読みしてしまいました。ありがとうございます!番外編も楽しみに読ませてもらいます! (4月18日 1時) (レス) @page34 id: 99fac2651d (このIDを非表示/違反報告)
寒蘭(プロフ) - 千珠さん» 千珠様、たくさんお褒め頂きありがとうございます〜!(*>д<*)楽しんでくださったのでしたら、私としてもこの上ない幸せです!これからも頑張ります!! (2月16日 19時) (レス) id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
千珠 - 語彙力がなさすぎてなんてコメントすればいいかあれなんですけど、本当に最高でした!!(語彙力なくてごめんなさい)後日譚の方にも顔を出しに行きます!!お体の方も気を付けながら頑張ってください!!ずっと応援しています!!! (2月16日 12時) (レス) id: 0eaf370a5f (このIDを非表示/違反報告)
千珠 - 初めまして!初コメ失礼します!この作品を読んでいっき見してしまいました、千珠といいます!寒蘭様の描く物語がとても私の好みドストライクで最高でした!!まさか夢主の父がおじいちゃん(三日月)だったとは…親子の感動の再開の場面で泣きそうになりました… (2月16日 12時) (レス) id: 0eaf370a5f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:寒蘭 | 作成日時:2023年12月14日 21時

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