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第191話 ページ5

加州の言葉に骨喰と太鼓鐘が補足を入れると、しっかり聞いていたらしい三日月が両手で顔を覆い隠して俯いた。

普段は嫉妬しないくせに、寝癖が最初に見たくて拗ねるとか…確かに、ちょっと変わってる。
個体差ってやっぱりあるんだななんて考えていると、そんな空気から逃れるように、三日月がわざとらしい声音で椿さんが握っていた刀を指し示した。


「と、ところで、その刀は何者だ?初めて見る顔故、ずっと気になっておったが」


宗近と澪ちゃんに挟まれてげんなりしていた椿さんは、勝機とばかりに素早く二人の間から抜け出して、持っていた刀を見やすいよう差し出しながら微笑んだ。


「あぁ、紹介しよう。これは、私の双子の兄だ」

「…双子の…」

「…兄…?」


椿さんの言葉に数拍間を置いて、加州と太鼓鐘がぽつりと同じ言葉を繰り返す。
問うた三日月本刃も、ぽかんと目を見開いて周囲に疑問符を散らしている。
そしてようやく硬直から抜け出したかと思うと、無言で皆がこちらを向くので、僕は居心地の悪さを感じながら椿さんの隣に立って彼女を手で示した。


「実はね、椿さんも僕と同じく、人間と刀剣男士の間に生まれた人なんだよ。このお兄さんは、椿さんが生まれる数分前に、鋼の状態で産まれたんだって」

「初めはどうしたものかと両親も困惑していたが、時間が経つにつれ自然と刀の形に変化していってな…今では立派な打刀へと成長したので、こうして私と共に戦ってもらっているわけだ」


"まぁ刀剣としてはまだまだ赤ん坊だから、付喪神にはなっていないがな"と快活に笑って付け加えた椿さんに、ようやくすべてを飲み込んだらしい三日月たちが、変な顔で僕に視線を止めた。
そしてわなわなと唇を震わせた三日月が、そっと僕の手を取って優しく包み込む。


「ま、まさか…雛にも、鋼だった時が…?」

「いやいやいや、僕は普通に人型で産まれてるからね!?
ていうか、鋼で産まれてたら僕も刀になってるでしょ」


突拍子もない発言に驚いて勢いよく首を振ると、三日月含む本丸の刀たちはホッとしたように表情を緩ませた。
今の流れでどうしてそういう思考になったのだろうか…と一人呆れつつ、ついでに椿さんに聞きたいことがあったので、お兄さんを丁寧に納刀する彼女を見上げた。


「そういえば、あのギリギリまでどこで何してたんですか?椿さん…もっと早く来てほしかったです。何回か死にかけたんですよ」

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寒蘭(プロフ) - レイラさん» コメントありがとうございます!そう言って頂けて嬉しい限りです(*´Д`*)これからも頑張ります!! (4月18日 18時) (レス) id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
レイラ(プロフ) - 初コメ失礼します!結論から言うと泣きました…。いやもう、設定から二代目の事からすごくよく考えられてて凄いなと!!!久しぶりに一気読みしてしまいました。ありがとうございます!番外編も楽しみに読ませてもらいます! (4月18日 1時) (レス) @page34 id: 99fac2651d (このIDを非表示/違反報告)
寒蘭(プロフ) - 千珠さん» 千珠様、たくさんお褒め頂きありがとうございます〜!(*>д<*)楽しんでくださったのでしたら、私としてもこの上ない幸せです!これからも頑張ります!! (2月16日 19時) (レス) id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
千珠 - 語彙力がなさすぎてなんてコメントすればいいかあれなんですけど、本当に最高でした!!(語彙力なくてごめんなさい)後日譚の方にも顔を出しに行きます!!お体の方も気を付けながら頑張ってください!!ずっと応援しています!!! (2月16日 12時) (レス) id: 0eaf370a5f (このIDを非表示/違反報告)
千珠 - 初めまして!初コメ失礼します!この作品を読んでいっき見してしまいました、千珠といいます!寒蘭様の描く物語がとても私の好みドストライクで最高でした!!まさか夢主の父がおじいちゃん(三日月)だったとは…親子の感動の再開の場面で泣きそうになりました… (2月16日 12時) (レス) id: 0eaf370a5f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:寒蘭 | 作成日時:2023年12月14日 21時

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