エピローグ ページ33
「と、ところで！今日だったかな、三日月宗近が帰還するのは」
「う、うん！そうそう、だからこうしてお出迎えしようと思って」
何とも言えない微妙な雰囲気を断ち切るように、長義がぎこちなくわざとらしい声を上げる。
それに僕もつられてつい言葉がつっかえてしまったが、さらに誤魔化すように箒を忙しなく動かした。
そう──今日は、三日月が修行から帰ってくる日。
四日前の朝、誰にも告げずに修行に出ようとしていた彼をたまたま見つけて、きちんと送り出したのだ。
彼は、この本丸の初太刀で第一部隊隊長。
本来なら、もっと早い段階で修行に行くこともできたはず。
けれど三日月は、これまで修行を先送りにしてきた。
その理由がどうしても知りたくて、これから旅立とうという三日月に問いかけた。
『俺は…臆病だったのだ。
俺がおらぬ間に、再び大侵攻が起こったら。
日和の身に、仲間の身に、何かがあったら…
そう考えるだけで足がすくみ、俺はいつまでも己と向き合えぬままだった。
しかし…そのせいで、日和は俺の手から零れ落ちてしまった。もっと早く修行を終えていれば。もっと強くなっていれば…
もしかしたら、日和を失うことはなかったやもしれぬ。
だから、もう迷わないことにした。
仲間の強さを信じることにした。
時雨…いや、Aよ。
ここで、日和と共に、俺の帰りを待っていてくれ』
…そう言って旅立った三日月はとても美しく、そして強かった。
いつもぽやぽやしていて突然じじい面するし、心配性でくっつき虫だし、変なところでやきもち焼きだけど…
僕が彼の息子でいられることが、どうしようもなく嬉しく思う。
彼だけじゃない。
たった一年、僕のことをその身が朽ちるまで愛し、この本丸へ帰れるよう導いてくれた母様。
そしてそんな母様に愛を教え、これまでも、そしてこれからも愛し続けてくれる、やさしい神様たち。
そんな彼らを家族だと胸を張って言えるのが、この上ない幸せだ。
「…あぁ、帰ったみたいだね」
長義の言葉に、正門を振り返る。
その先に以前と違うようで違わないような、そんな柔らかくも美しい月の微笑みが姿を見せた。
いっそう強い風が吹いて、せっかく集めた落ち葉が舞う。
けれどそれに構うことなく、僕は持っていた箒を長義に押し付けて、駆けだした。
「父様ー！
おかえりなさーい！」
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寒蘭(プロフ) - レイラさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けて嬉しい限りです(*´Д`*)これからも頑張ります！！ (4月18日 18時) (
レス) id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
レイラ(プロフ) - 初コメ失礼します！結論から言うと泣きました…。いやもう、設定から二代目の事からすごくよく考えられてて凄いなと！！！久しぶりに一気読みしてしまいました。ありがとうございます！番外編も楽しみに読ませてもらいます！ (4月18日 1時) (レス) @page34 id: 99fac2651d (このIDを非表示/違反報告)
寒蘭(プロフ) - 千珠さん» 千珠様、たくさんお褒め頂きありがとうございます〜！(*>д<*)楽しんでくださったのでしたら、私としてもこの上ない幸せです！これからも頑張ります！！ (2月16日 19時) (レス) id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
千珠 - 語彙力がなさすぎてなんてコメントすればいいかあれなんですけど、本当に最高でした！！(語彙力なくてごめんなさい)後日譚の方にも顔を出しに行きます！！お体の方も気を付けながら頑張ってください！！ずっと応援しています！！！ (2月16日 12時) (レス) id: 0eaf370a5f (このIDを非表示/違反報告)
千珠 - 初めまして！初コメ失礼します！この作品を読んでいっき見してしまいました、千珠といいます！寒蘭様の描く物語がとても私の好みドストライクで最高でした！！まさか夢主の父がおじいちゃん(三日月)だったとは…親子の感動の再開の場面で泣きそうになりました… (2月16日 12時) (レス) id: 0eaf370a5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年12月14日 21時
