第206話 ページ20
「…は」
雑巾の汚れを水で洗い流す間に、加州が呆気にとられたように短く息を漏らした。
それに気づかないふりをして、いくらか綺麗になった雑巾の水を切っていると、動揺を隠せないままの加州の声が響く。
「どんな人、って…
あいつらからも、聞いてるでしょ？俺たちのことを都合のいい玩具としか思ってない…」
「違う」
答えを探すように揺れる加州の言葉を途中で断ち切れば、突然否定されたことに驚いたのか彼は息を呑んだ。
水を切り終えた雑巾を手にして立ち上がった僕は加州を振り向き、吹き付けた風になびく前髪に見え隠れする彼の紅の
ざわざわと騒いでは紅葉を散らす木々に奪われないよう、僕ははっきりと言葉を紡いだ。
「僕は、みんなが見てきた二代目の姿を聞いているんじゃない…"君が見てきた二代目の姿"を聞いているんだ」
「ッ…！」
ざあっと一層強く風が吹き抜ける。
けれどそれは一足遅く、ちゃんと僕の声は加州に届いたようで、彼は大きく目を見開いて指先を震わせた。
そんな彼の隣にしゃがみ込んで、また石碑を磨く。
けれどやっぱり苔は取れなくて、今度ちゃんとした苔の落とし方を調べた方がいいかと思案する。
すると、どこか感情の無い加州の声が、頭上から降ってきた。
「…いつから、気づいてたの」
ぽつりと呟かれた言葉に、僕はそちらを見上げることもしないまま、幾分かきれいになった石碑を撫でた。
「最初に違和感を覚えたのは、この本丸に配属される少し前…政府で、ここの資料を確認している時だった。
ここは典型的なブラック運営がされている本丸だと聞いていたのに、これまで一振りも破壊されたことがないってのが気になったんだ」
政府の情報機関では審神者のデータと違い、刀剣男士に関するデータは改ざんが不可能である。
そのため、この本丸内では折れたことになっていた加州も、政府のデータではしっかり"重傷"と記録されていた。
けれどブラック運営がなされていた本丸で、刀剣破壊となった者が一振りもいないというのは、どうにも違和感が拭えない。
審神者が彼らを道具としか見ていないのなら、尚の事。
「次に、太鼓鐘と村雲江にかけられていた呪い。
ああいう呪いは、効果が出るのは早くて一か月、遅くても半年だ。けれど、二代目が亡くなって一年が経ってからも、二振りの呪いは重篤とまで進行していなかった…」
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寒蘭(プロフ) - レイラさん» コメントありがとうございます！そう言って頂けて嬉しい限りです(*´Д`*)これからも頑張ります！！ (4月18日 18時) (
レス) id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
レイラ(プロフ) - 初コメ失礼します！結論から言うと泣きました…。いやもう、設定から二代目の事からすごくよく考えられてて凄いなと！！！久しぶりに一気読みしてしまいました。ありがとうございます！番外編も楽しみに読ませてもらいます！ (4月18日 1時) (レス) @page34 id: 99fac2651d (このIDを非表示/違反報告)
寒蘭(プロフ) - 千珠さん» 千珠様、たくさんお褒め頂きありがとうございます〜！(*>д<*)楽しんでくださったのでしたら、私としてもこの上ない幸せです！これからも頑張ります！！ (2月16日 19時) (レス) id: 69f96811e5 (このIDを非表示/違反報告)
千珠 - 語彙力がなさすぎてなんてコメントすればいいかあれなんですけど、本当に最高でした！！(語彙力なくてごめんなさい)後日譚の方にも顔を出しに行きます！！お体の方も気を付けながら頑張ってください！！ずっと応援しています！！！ (2月16日 12時) (レス) id: 0eaf370a5f (このIDを非表示/違反報告)
千珠 - 初めまして！初コメ失礼します！この作品を読んでいっき見してしまいました、千珠といいます！寒蘭様の描く物語がとても私の好みドストライクで最高でした！！まさか夢主の父がおじいちゃん(三日月)だったとは…親子の感動の再開の場面で泣きそうになりました… (2月16日 12時) (レス) id: 0eaf370a5f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：寒蘭 | 作成日時：2023年12月14日 21時
