九秋審神者、黒本丸を立て直す弐 (ページ8)

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第53話ページ8

「えー…大変見苦しいところをお見せしてしまい申し訳ありませんでした…」

畳に掌をしっかりつけて深々とお辞儀する。
本当に、自分でも信じられないほどの醜態を晒してしまった。
今頃、僕の目は真っ赤に腫れてるんだろう。左目を覆う眼帯の中もじっとり濡れて不快だ。あとで新しいのに交換しなきゃ。
本当に穴があったら入りたい。
鶴丸がどこかに落とし穴でも作っていないかな…

そんな現実逃避を図っていると、目の前のじじい共はそんな僕の気も知らずにけたけたと笑っている。

「はっはっは、よきかなよきかな。
ようやくお前の本質を、幾らか理解できた。
それは俺たちにとっても、お前にとっても良いことだ」

「そうだな。こちらばかり手玉に取られるのは柄じゃない」

「手玉って…」

不本意な物言いをされてため息をつくと、ふと三日月がこちらに手を差し出した。
何かと思ってその手と三日月の顔を交互に見比べていると、彼は愉快そうに目尻を下げながら頷いた。

「遅くなってしまったが。
改めて、審神者就任おめでとう。
これから、よろしく頼む」

予想だにしなかった言葉に、目を大きく見開く。
三日月の後ろの鶴丸や燭台切に目配せしても、彼らも笑って頷くだけ。

…まだ、この本丸全員に認められたわけではない。
初期刀は隙がなく、三日月たち以上に人間を嫌っている様子だったし、初鍛刀も酷く怯えていた。
彼らに認められるまで、まだまだ先は長いだろう。

けれど──

「…ありがとう。
まだ全振りに認められたわけじゃないけど、あなたたちにそう言ってもらえるのは心強い。
こちらこそ、よろしくお願いします」

差し出された三日月の手を握り、握手を交わす。
触れた手は随分と温かくて、もう彼が警戒していないことが伝わった。

…ひとまず、これでようやく一番の難問だと思われていた双璧を崩した。
三日月、そして伊達の刀。

彼らが認めたとなれば、これからはよりスムーズに動けるだろう。
よしっ、と気合を入れ直して、長義を振り返った。

「さ、ちょっと時間かかっちゃったけど、手入れの続き行くよ！」

「…やめておいた方がいいんじゃないかな」

僕らが話しているうちに資材を整理していた長義は、呆れたようにため息をついて部屋の外を指し示した。