九秋審神者、黒本丸を立て直す弐 (ページ25)

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第70話神の傍観ページ25

──…夜半を過ぎた頃。
皆が眠りに落ち、静まり返った本丸内を、戦装束のまま徘徊する者がいた。

今夜の不寝番(ふしんばん)を買って出た彼は、夜が更けるまで、この本丸内に異常がないか見回る役目を務めている。
…しかし、彼の目的はそれだけではなかった。

「……」

同派の中でもより高い隠蔽力を有する彼は、極限までその気配を消すと、とある部屋の障子をそっと開いた。
音を立てることも無く開くと、忍んでいるのが感じられないほど自然な動作で入室する。
ごく普通に歩いているはずの彼からは、足を摺(す)る音も、衣服の擦れる音さえも聞こえない。

部屋の中では二つの敷布団が並んでおり、右側の布団は小さく、左側の布団は大きく膨らんでいる。彼は、数刻前に見た目的の人物を脳裏に浮かべると、膨らみが小さい方の布団へと近づいた。

そして、腰に差した己の本体とも呼べる得物を静かに抜き取る。
月の光に反射した刃を、布団から覗く黒い頭に向けた。

すると、外で突風が吹いて、庭の木々が激しくさざめいた。
その瞬間を待ちわびていた彼は、騒ぐ木々に紛れ、刀を振り下ろす──

──しかし、その刃は、ギィンッと鈍い音を立てて防がれた。

「ッ!?」

それを鞘で防いだのは、今まさに彼が刃を突き立てた張本人…

山姥切長義だった。

「長義！」

予想と違う顔が布団から覗き出たことにより、混乱と焦燥に駆られていると、隣の布団から小さな体が飛び出して何かを投げつけた。

咄嗟に刀を長義から離し、飛んできたものを切り裂くと、周囲にぶわりと羽根が舞う。
投げつけられたのは枕だったかと理解するうち、間髪入れずに布団から抜け出した長義が鞘を振り下ろした。
それを素早く察知すると、後ろに飛び退いて体勢を整え、周囲に視線を走らせる。

その先には、ワイシャツ姿の審神者代理と、戦装束の山姥切長義が佇んでいた。

代理は縁側まで後退した刀剣男士を見据えると、してやったりという強気な笑みを浮かべた。

「まさか、君の方が来るとは思わなかったよ。

──薬研藤四郎」

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作中に失礼します。作者の寒蘭です。
他作者様の作品で「訳アリ審神者」というシリーズが既に存在しているようなので、こちらのタイトルを「九秋(きゅうしゅう)審神者」に変更させて頂きます。突然の変更となり申し訳ありません。
今後とも宜しくお願い致します。