第69話 ページ24
「はぁあ〜お腹いっぱい…長義大丈夫?お腹痛くない?」
「君と一緒にしないでくれるかな」
夕食を食べ終えた僕たちは三日月と別れ、自室に戻ってきた。
結局僕はオムライスを食べ切ることが出来なくて、残りを長義に食べてもらったのだが、彼は簡単に完食してみせたのでちょっと羨ましい。
ご飯を食べたあとは、交代でお風呂に入った。
お風呂も炊事場と同じく、男士たちが一度に複数入れるくらい広い大浴場と、一人用の小さなお風呂がある。
これは初代の審神者が女性だった名残らしい。
今はほとんど使われていないみたいだったけど、ちゃんと綺麗に掃除されていて、やはり初代がいつ帰ってきてもいいようにと整備されていた。
…ほんの少しだけ、帰る場所がある初代のことを、羨ましく思った。
…いや、感傷的になるのはやめよう。
歯も磨いて寝巻きに着替えたので、寝る前に少し明日の予定を確認する。
ちなみに、僕らは同じ部屋に泊まっている。
何かあった時にこの方が対処しやすいだろうとのことで、長義から提案されたのだ。
「明日もしばらくは手入れ屋さんかなぁ…まだ内番とか出陣とかには口出しさせて貰えないだろうし…ていうか、ここの内番とかって今どんな感じなんだろ?」
「内番は現状、三日月宗近と偽物くんが調整しているようだね。出陣には二代目が亡くなってから行っていないみたいだ」
「なるほど…戦好きの刀も多いから、早めに出してあげたいけど…ま、それより心身回復が優先かな」
「その方がいいだろう」
「あ、そういえば気になってたんだけど、あの刀ってさ…」
などと明日からの予定を二人で練っていく。
重傷の刀は全振り手入れし終えたとはいえ、中傷も軽傷もまだまだ多い。
本当は一日で一気に終わらせられたらいいんだけど、ここでの信用が確立できていない今、それは不可能だ。
そういえば、三日月にこんのすけ用の油揚げを渡したけど、ちゃんと食べてくれたかな。
今度、こんのすけにも話を聞かないとな…
*
しばらくいろいろと二人で決め事をして、ようやく眠ろうと言った時、僕は正座して長義に向き直った。
「あの、長義。もう一個いい?」
「何かな?」
長義も今日一日中僕に付き添って疲れているはずなのに、そんな様子を一切見せずにこちらに視線を寄越してくれる。
そんな彼に内心感謝しつつ、部屋の外に誰の気配も無いことを慎重に確認して、長義に顔を寄せて声を潜めた。
「…あのね、長義。
実は、お願いがあって──」
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作者名:寒蘭 | 作成日時:2023年11月1日 19時