九秋審神者、黒本丸を立て直す弐 (ページ23)

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第68話ページ23

「…で、三日月は向こうで食べないの？」

燭台切と長谷部が台所から出ていったのを尻目に、当然のように僕の正面の席に座って、美味しそうにオムライスを頬張る三日月に問う。
すると彼はこちらをじっと見つめたまま咀嚼を続け、やがてそれを飲み込んだ後ににぱっと弾けるような笑みを浮かべた。

「俺はここで食べるぞ！
ふふ、まだお前は"余所者"らしいからな、監視役は一人でもいた方がいいだろう。
…ところで、先ほどからずっと気になっておったが、食べないのか？冷めてしまうぞ」

そう言って手付かずになっている僕のオムライスを示す三日月に、僕はおずおずと彼の顔色を窺うように身をすくめた。

「た、食べてもいい…？」

「？もちろん。冷めてしまっては、この美味しさが半減してしまうからなぁ」

にこやかに頷いた三日月に安堵して、僕はようやく「いただきます！」と手を合わせて食べ始めた。
隣の長義が苦い顔をして僕を見て、三日月と視線を交わしているとは気づかずに。

「むっ…!?おいひい！んぐ、ちょーぎ！美味しい！」

「はいはい、わかったからゆっくり食べろ」

ふわっふわの卵に甘酸っぱいケチャップがとても合ってて美味しい。
最初は卵焼きにケチャップ？と思ったけど、オムライスの卵は卵焼きとは違う味付けでとてもケチャップと相性がいい。
結構大きめのオムライスだけど、これならペロッと食べ切れちゃいそう！

サラダもシャキシャキで新鮮だし、ソーセージとほうれん草のソテーもシンプルな味付けでぱくぱく食べられる。美味しい。

そして、透明な赤茶色のスープは──

「…ん？」

こくり、と一口飲んで、違和感に眉をひそめた。
しかし隣の長義を見ても、正面の三日月を見ても、平然とスープを飲んでいる。

「…ねぇ、長義…
このスープ、美味しい…ね？」

「ん？あぁ、そうだね。さすが祖の作ったオニオンスープだ」

「歌仙の作る味噌汁も至高だが、燭台切のおにおんすぅぷも絶品だなぁ」

オニオンスープを飲んでほぅと息を吐き出した三日月に、僕は曖昧な笑みで返した。
そして、確かめるようにもう一度、スープに口をつける。

…薄い。このスープだけ、やけに味付けが薄い。
オムライスやソテーはしっかり味がついていることから、燭台切の味付けが薄口というわけではないだろう。
それに…なんだか、草のような臭いがする。

これは…また一波乱ありそうだな、とどこか他人事のように考えながら、スープを一気に飲み干した。