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第63話 ページ18

「はぁ〜つっかれたぁ」


ふわふわの敷布団の上にダイブし、そのままうつ伏せでまどろむ。

あれから織田部屋を後にした僕たちは、三日月の案内で仮の寝所に案内された。
本当は審神者の部屋に案内するつもりだったらしいが、僕はまだ半数以上の男士たちからの信頼を得られていない。
そんな状態で審神者の部屋を使えば、命があるかわからないとのことだったので、一旦使っていない客間を使わせてもらうことになったのである。


「こら、スーツのまま寝るな。皴になるだろう」


少し遅れて部屋に入ってきた長義に咎められ、顔だけをそちらに向けてからかうように笑った。


「へへ、ちょぎママは厳しいなぁ」

「誰がママだ、誰が!」


手に提げていたスーツケースをドンッと勢いよく僕の枕元に置きながら、目尻を鬼のように釣り上げた長義にわざとらしく肩をすくめる。


「おーコワ、今度は鬼婆…いや、山姥かな?」

「…………」


山姥切だけに、なんつって☆と洒落を言っている間に長義はうつ伏せの僕の上に跨ると、僕の両足を掴んで思い切り体重をかけ、つま先を背中側に大きく近づける。
これ、あれだ。研修時代、僕が自己犠牲に走りすぎたり自分を下げる言動をした時、よく椿さんにやられてたやつ──その名も"エビ固め"だ!


「アーッ!ごめんなさいごめっいででででギブ!ギブッ!!」


無理矢理体が逸らされたことによって、太ももから下腹部にかけて強い痛みが走る。
ボフボフと枕を叩いて必死に謝ると、満足したらしい長義はフンっと大きく鼻を鳴らしてやめてくれた。


「いっつー…この本丸来てから一番命の危機感じたわ…」

「これに懲りたら、下手な呼び方をするのはやめることだね」

「えぇ〜親愛の証じゃん」

「君に親愛を抱かれてもな」


つれないことを言いながらもう一つのスーツケースを開けて中を整理する長義に、僕は拗ねて唇を尖らせながら自分のスーツケースを開けた。
中には着替えや洗面用具、そして結界用の札などが入っている。


「これ、受け取ってくれてありがとうね、長義」

「あぁ。政府用の連絡ゲートは、君では開けられないから仕方ない」

「世知辛いなぁ…ていうか、最初からこういう荷物持たせてくれなかった時点で、絶対に失敗するって思ってるよね?ムカつく〜」

「これまでここに来たすべての審神者が失敗しているからな。
新米も、ベテランも関係なく。
そこに訳アリの君が行っても、成功すると思う者はほとんどいないだろう」

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作者名:寒蘭 | 作成日時:2023年11月1日 19時

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