九秋審神者、黒本丸を立て直す弐 (ページ17)

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第62話ページ17

"｢自分をただの道具だと思い込むのはもうやめろ、それは刷り込みであって事実じゃない｣"

"｢己の力を過信しすぎないのはいいことだ。だがそれは己を正しく理解することを放棄する理由にはならない｣"

"｢生きたければ知れ、その頭で理解しろ。己の事と、世界の事を｣"

──政府の手によって抹消されかけた僕を救ってくれた、政府所属の審神者、椿さん。
あの人、僕に同情して助けてくれたみたいなこと言ってたけど、研修中はほんとスパルタだったなぁ…

記憶力に自信があると言えば、新米審神者向け教材CDを聴かされながら、時の政府と歴史修正主義者のこれまでの戦いを記した書物を並行して読まされ。

体が丈夫だと言えば、政府の訓練施設で体力測定という名の"地獄の二十四時間服毒トライアスロン"──トライアスロンって二十四時間やるものじゃなくない？てか服毒って何？──をやらされ。

霊力も潤沢ですと言えば、霊力の少ない審神者たちに枯渇するまで霊力を分け与え……

…おかしいな。時間遡行軍にいた時よりも過酷じゃないか？
いや、ちゃんとご飯くれたし、お風呂だって毎日ゆっくり浸からせてもらったし、お布団もふかふかだったし、失敗しても殴られたりしなかったし、何より体を求められるなんてことも一切なかった。

うん、大丈夫。遡行軍の方が治安悪かった。
そう自分に言い聞かせないといけないレベルでは、あったけども。

…でも、長義の言う通り、ちゃんと今の自分のことを理解しないと、また椿さんから訓練に誘われてしまうかもしれない。
それだけは絶対に嫌なので、今度こそ今日は終わりにすると約束した。

「…よし、これで二振りとも大丈夫だね。
出来ればなんだけど、もし負傷している男士を見かけたら、手入れを受けるよう声だけかけてもらってもいいかな？
たぶん、僕が手入れをして回ってるっていうのは、みんなもう知っていると思うんだけど…なるべくスムーズにやって、早くみんなのこと元気にしてあげたいからさ」

眉を下げて笑ってみると、薬研と長谷部は一度互いの顔を見合わせた後、快く了承の返事をしてくれた。

もし自ら手入れを申し出る男士がいたら引き受けるが、ひとまず手入れ屋さんとして部屋を巡るのは本日はここまで。
伊達組の次くらいに難度が高そうな織田組もすんなり終わって、まだまだ負傷している男士はいるものの、一旦区切りはついただろう。

明日に備えて、今日はご飯食べたら早めに寝よう…