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第59話 ページ14

「手入れするだなんだと意気込んでいたが、誰が負傷しているかなんて把握しとらんだろうと思っていた…
まさか、来るとは思ってなかったぜ」


薬研の後に続いて入出すると、布団に横たわる不動と、そのそばに控える長谷部の姿があった。
特に襲いかかってくる様子も無く、第一関門はクリアだ。


「…生憎と、全部把握してるよ。
誰がどの程度の負傷なのか、霊力の残量まで、すべてね。
ま、この三日の間に新たに負傷してたらわからないけど」


皮肉った言い方で返すと、薬研はこちらを振り返り、好戦的な笑みを浮かべた。


「なら、うちの粟田口の兄弟、誰がどの程度負傷しているか当ててもらおうか?
もちろん全員、ここしばらくは怪我なんかしてないぜ」


そう言って不動の前に立ち塞がる薬研。
試験的なことかな…これを答えることが罠だったりしないか?と周囲に気を配りながら、指折り数えて回答する。


「厚、前田、博多、乱、五虎退、薬研が軽傷。
一期、骨喰、平野、後藤、包丁が中傷。
鳴狐、鯰尾、秋田、毛利が重傷。
で、信濃は軽傷とまでは行かないけど、確か生存値が三くらい減ってたかな」


鬼丸国綱と白山吉光はまだいなかったはずだ。
数え終わった手をヒラヒラ振ってみると、薬研は目を細めて口元に薄い笑みを貼り付けた。
薬研みたいな小柄の男士がしても怖いな、その顔…


「ほぉー…やるじゃねぇか。そこまで細かく覚えてるとはな」

「記憶力だけはいいからね」

「なるほど…ま、これまでのような口先だけの審神者とは違うって訳だ。なぁ、長谷部。どう思う?」


横目で薬研が問いかけると、それまで静かに傍観していた長谷部は冷めた目付きで鼻を鳴らした。


「フン、どうだか。たかだか記憶力がいい程度で、俺たちの主に相応しいとは…到底思えん」


当然、簡単に受け入れてはくれない。
それはわかったいたが、何だか想像より当たりが軽くて拍子抜けしている。
そっと長義の顔色を窺うと、彼も奇妙なものを見るような目で薬研や長谷部を観察していた。

逆側にいる三日月といえば、なにを考えているのかわからない、ほけほけとした柔らかな笑みを浮かべている。

これは…今までとは別の角度で難しそうだぞ。
今日ここに来てから何も食べてないし、できれば燭台切のご飯にありつきたいんだけどな…

と内心溜息をつきつつ、どうやって手入れを受けてもらおうかと思考を巡らせた。

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作者名:寒蘭 | 作成日時:2023年11月1日 19時

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