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『じゃあ貰っていいですか?』
「うん。はいどーぞ」
立ち上がり、新しいスプーンでパフェの中に取り残された苺を掬おうとした時、唇にふにっと柔らかくて冷たいものが当たった。
『え、』
「いるんでしょ?ほらどーぞ?この稀代の名探偵様が君にあーんしてやってるんだからありがたく味わってよね」
こてん、と首を傾けて柔らかく微笑む。
再び隣からため息が聞こえたので、グギギ、と音のなりそうな硬い首でナオミちゃんを見ると、いわんこっちゃないという顔で返されてしまった。
え、なんか思ってた展開と違くない?
「ほーらー」
固まる私につんつんと苺で唇をつつく。
さっきまで彼が口をつけていたスプーン。紅く照らされる苺、全てわかっていたのかのような乱歩さんの表情。
そして妖しく光る翠色の瞳、ひとみ!!
『じ、じゃあ…いただき…ます。』
熱くなった顔に、少し震える口をゆっくり開いて苺を食べようとしたその時、にやりと笑った乱歩さんがいきなり立ち上がって、くるりとスプーンを回し自分の口に入れてしまったのだ。
『う、……あ、…え?』
「うん美味しい。ここの苺はどんな季節でも美味しいね!」
「ありがとうございます〜」
パチンと音を鳴らして私にでこぴんすると、乱歩さんは何事も無かったかのように座り直してまた幸せそうにパフェを食べ進めた。
開いた口が塞がらない状態の私は小刻みに震えながらゆっくり腰を下ろす。あぁ、まだ痛い
『え、っと…き、嫌いって今言ってませんでした?』
「嘘だよ」
「…Aさん、考えてもみてください。探偵社に送られてくる贈呈品が果物だった時は毎回乱歩さんが沢山召し上がられていますのよ?ご存知でしょう?」
『じ、事務員と調査員の違いが出た…』
「君の敗因は僕に勝てると思い込んだことだね。策士策に溺れる!僕の弱味でも握ろうとしたんだろうけど100年早かったねぇ」
ぽんぽんと頭を叩かれて呆気なくパフェが完食された。
嗚呼もう最悪だ。また彼に踊らされた。
手元のお絞りを頬に当てて熱を覚ます。
目の前の名探偵は私の滑稽な姿が見れて随分ご満悦のようで、頬杖を着いて音符がつくくらいの笑顔を振りまいている。足も揺らしちゃって。
「顔覚ますのもいいけど化粧取れないようにね」
『余計なお世話です!!』
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ゅ - 1話の太宰さんの下の方から潰された蛙の様な声がするで笑ってしまいました、笑 (2023年4月22日 14時) (レス) @page2 id: 74e0460151 (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわありす(プロフ) - 初めまして。完結おめでとうございます!私は正直なところ今まであまり乱歩さんを意識したことがなかったのですが、この作品で沼にドボンしました……有難うございます!お疲れさまでした。 (2023年4月9日 23時) (レス) @page42 id: d368e0b18f (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - 梅原さん» わわ、嬉しいです!一緒に乱歩さんの沼にはまり落ちましょう……!! (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - モンブランさん» わー!嬉しい!ありがとうございます💕なかなか喋らせるのに苦戦してます…笑笑 (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
梅原(プロフ) - アニメ見て乱歩さんいいなと思っていた時にこの小説に出会いました。久々に面白いものが読めてテンションあがりました。。。 (2023年2月20日 19時) (レス) @page32 id: ecb93650e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小榛 | 作成日時:2023年1月8日 11時