▼ ページ30
*
なんか、なんだろう。話しにくいし合わせにくい。つい他の事が浮かんで集中出来ない。
初対面の人と踏み込んだ話をするのって難しいし、なんだか私の事を誤解されているような気がする。
いつもはこんな丁寧に喋らないし、わざわざ手を添えてお茶も飲まない。今足が痺れてるのだって彼は知らない。
いつもだったら乱歩さんが気が付いてくれて、声を掛けてくれるのに。
そう、乱歩さんはいつも私の事を手の平で…
「今のお仕事はやりがいを感じているのですか?結婚後などはどうするおつもりで?」
そうだ。
私で遊んでるように見えてずっと私の事を気にかけてるんだ。
常日頃重なる目線とか、私の会話の間で逐一考え事をするところとか、今日の事だってきっと、上っ面しか私を知らない彼のせいで私が嫌な気持ちになるのを心配して
「私は確かに貴方の仕事をする姿に一目惚れしました。ですがやはり結婚となると貴方の身を案じてですね、その、危険ですし危ない職業でしょう?」
『…え?あ、まぁ、はい』
やばい。今日の私乱歩さんの事考え過ぎだ。
何も話聞けてない。
「……あの、二葉亭さん。今日は一旦お開きにしましょうか?もうお疲れのようですね。ゆっくりお休みになってください。また後日に会って頂けませんか?」
『す、すみませんわざわざ、!えっと、はい、すみません、』
ずっとぼーっとしていた縁談は呆気なくお開きとなった。私のせいであるけれど。
とにかく今は無性に乱歩さんの声を聞きたい。ごめんなさい。
*
あっさりと店を出て一気に冷え込む体を擦りながら、今日のことを思い出す。
あまり記憶に残っていない彼との会話。やけに脳裏に浮かんだ乱歩さん。きっと二人が正反対すぎて乱歩さんだったらこうなのにって思ったんだ。
乱歩さんだったら。
冷え切ったドアを体任せに開ける。やけに部屋が暖かくて、冷めきった頬に温い風が触れた。
なんで暖房が?
「やぁおかえり、A」
『…もう驚きもしないです。ただいまです。』
「いいねぇこういうの。夫婦みたいだ!」
『いやふっつーに犯罪ですから!』
蜜柑を頬張りながら猫みたいに笑った乱歩さん。
正直訳が分からない程に会いたかった気がするので、心の底から安心したような脱力したような気持ちになる。
嗚呼、疲れた。
「あーちょっと!まだ気抜かないでよ」
『え〜、?もう私疲れちゃって』
「次は僕と見合いをしよう」
804人がお気に入り
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゅ - 1話の太宰さんの下の方から潰された蛙の様な声がするで笑ってしまいました、笑 (2023年4月22日 14時) (レス) @page2 id: 74e0460151 (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわありす(プロフ) - 初めまして。完結おめでとうございます!私は正直なところ今まであまり乱歩さんを意識したことがなかったのですが、この作品で沼にドボンしました……有難うございます!お疲れさまでした。 (2023年4月9日 23時) (レス) @page42 id: d368e0b18f (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - 梅原さん» わわ、嬉しいです!一緒に乱歩さんの沼にはまり落ちましょう……!! (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - モンブランさん» わー!嬉しい!ありがとうございます💕なかなか喋らせるのに苦戦してます…笑笑 (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
梅原(プロフ) - アニメ見て乱歩さんいいなと思っていた時にこの小説に出会いました。久々に面白いものが読めてテンションあがりました。。。 (2023年2月20日 19時) (レス) @page32 id: ecb93650e6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:小榛 | 作成日時:2023年1月8日 11時