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内緒って無理でしょ。普通に。普通に!
買い物袋を放り投げて着替えもせずに寝台の上に飛び乗る。
恋人が居るって勘違いされて怒られて挙句の果てには額に接吻されて。
接吻…。
『あー!!無理!誰かに話したい!ナオミちゃんにでも話したい…無理…』
思うがままに叫んで、段々と声が小さくなった頃、ふと冷静になる。
そういえば私は社員寮に住んでいるのだった。社員に今日の事がばれたらそれこそ冷やかしだけじゃ済まない。
それにもう
「あれ?Aさん今度は違う匂いがします」
『え?なんだろう』
「なんていうか…何処かで…………あ、!乱歩さんの匂いが」
『うわ!!!!!!かつし君黙って!!!』
「敦です!!!」
というやり取りをしているのだ。
完全に敦君には怪しまれている。へにょへにょな敦君の事だから与謝野女医などにはコロッと喋りそうだし太宰さんなんかに知られたりしたら…。
想像もしたくないのでとっとと服を脱ごう。
肩から落ちる布に、すん、と鼻を近ずけて香りを嗅いでみるが乱歩さんの匂いなんてしないし、ましてや自分の匂いすらも分からない。
てか乱歩さんの匂いってなんだ。
てかなんで私匂い嗅いでるの!!!
情緒不安定な私の心が暴れ回って勢いよく服を投げる。
息を切らして、また冷静になった頃、近くにあった枕に顔を埋めて大声を上げた。
*
ギュッと飲料ゼリーを飲み干しながらキーボードを叩く。
ほとんどが八つ当たりだが、例の夢のせいでまた寝付きが悪かったのだ。それに。
「おや?随分早い出勤だねぇ、やる気に満ち溢れているAちゃんなんて久しぶりだよ」
『やる気があるに見えますか?太宰さん』
「確かに。どちらかというと闘志に燃えているように感じるね」
それに、夢の中での情景とあの時の乱歩さんが重なってしまってやけにドキドキしてしまうのだ。そんなんじゃないけど。
でも正直、得体の知れない誰かに翻弄されるよりは乱歩さんに手のひらで転がされている方が幾分かましであるし、誰か分かっているだけで安心する。
そんなんじゃないけど!
次々と出勤してくる社員達が私を見て顔を引き攣らせていく。
太宰さんが目の下を指しているのできっと私の隈が酷いのであろう。私だって寝れる事なら寝たい。
…少し化粧で隠すべきかな。
乱歩さんにいじられたら嫌だし。
「乱歩君はいるであるか…?」
噂をすれば乱歩さんの話。
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ゅ - 1話の太宰さんの下の方から潰された蛙の様な声がするで笑ってしまいました、笑 (2023年4月22日 14時) (レス) @page2 id: 74e0460151 (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわありす(プロフ) - 初めまして。完結おめでとうございます!私は正直なところ今まであまり乱歩さんを意識したことがなかったのですが、この作品で沼にドボンしました……有難うございます!お疲れさまでした。 (2023年4月9日 23時) (レス) @page42 id: d368e0b18f (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - 梅原さん» わわ、嬉しいです!一緒に乱歩さんの沼にはまり落ちましょう……!! (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - モンブランさん» わー!嬉しい!ありがとうございます💕なかなか喋らせるのに苦戦してます…笑笑 (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
梅原(プロフ) - アニメ見て乱歩さんいいなと思っていた時にこの小説に出会いました。久々に面白いものが読めてテンションあがりました。。。 (2023年2月20日 19時) (レス) @page32 id: ecb93650e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小榛 | 作成日時:2023年1月8日 11時