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いつしかの資料の読み合わせをしている時の様に、乱歩さんは座って作業をしている私の横から、体を乗り出してパソコンを見ている。
距離は限りなく近いが、もう緊張なんてしない。寧ろ警戒心を最大にして画面を見つめる。今度こそ眼鏡をかけられない為に!
そして私のお腹よ、絶対鳴らないでくれ。莫迦にされる未来しか見えない。
「あ、誤字」
『〜っ、……?…あ、ありがとうございます』
画面につんつんと刺されたとこに震えたカーソルを合わせる。
なんか今、凄く変な感じがした。
腰にくるような、ゾクリとするような感じだった。
最近夢で耳を触られているせいかやけに敏感になっていて、横からした心地の良い声に肩を揺らしてしまった。
ざわっとした全身を落ち着かせて文字をひとつ消す。
「君、なんか今日、変だ」
『え?』
ずっとこっちを見ていたのか、目線が重なる。
今の一瞬で感づかれた?彼の翠色の目に映る自分は、分かりやすく瞳を揺らして動揺していた。
すぐさま乱歩さんは私の耳を親指で擦る。
さっきの驚いた目とは裏腹に、少し目を細めて何かどす黒いものが渦巻いているようだった。
『ひっ…、ちょっと、やめて、ください!』
耳を触る乱歩さんの腕を掴んで引き離そうとするも、上手く力が入らない。
私の反応を見て、へぇ、と漏らしてから今度は両耳を触り始めた。少し冷たくて、少しだけ乾燥している手で、耳の形を確かめながらじっくりと触る。
『、っ、やめ、〜っ、!』
「は、…何お前そういう事?珍しくボディーソープの匂いもするし、朝風呂してきたんだろ」
『、そ、そういう事って、?』
「それに何、ダイエットって、意味わかんないし。しなくていいし。今まで僕がいくら耳元で話したってこれっぽっちも反応しなかったくせに。最初に開発しようとすんのが耳とか男の趣味悪いんじゃない?やめなよそんな奴。」
『な、何の話ですか?!てか、みみっ、〜!』
眉間に皺を寄せてキュッと耳を握られる。
男?趣味?何の話?何か乱歩さんは勘違いをしている。
にしてもこの取り乱し用は見た事がなくて。
ゆっくり目を開くと、乱歩さんは怒っているような、悲しそうな表情をして顔を近づける。
「…嗚呼腹が立つ。腸が煮えくり返りそうだよ。早く手を回しておくんだった。」
耳元で囁いて更に、匂うね。と首の匂いを嗅いだ。
小さい声を漏らしながら乾いた喉を振り絞る。
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ゅ - 1話の太宰さんの下の方から潰された蛙の様な声がするで笑ってしまいました、笑 (2023年4月22日 14時) (レス) @page2 id: 74e0460151 (このIDを非表示/違反報告)
ふわふわありす(プロフ) - 初めまして。完結おめでとうございます!私は正直なところ今まであまり乱歩さんを意識したことがなかったのですが、この作品で沼にドボンしました……有難うございます!お疲れさまでした。 (2023年4月9日 23時) (レス) @page42 id: d368e0b18f (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - 梅原さん» わわ、嬉しいです!一緒に乱歩さんの沼にはまり落ちましょう……!! (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
よる(プロフ) - モンブランさん» わー!嬉しい!ありがとうございます💕なかなか喋らせるのに苦戦してます…笑笑 (2023年2月20日 19時) (レス) id: 05f2309d58 (このIDを非表示/違反報告)
梅原(プロフ) - アニメ見て乱歩さんいいなと思っていた時にこの小説に出会いました。久々に面白いものが読めてテンションあがりました。。。 (2023年2月20日 19時) (レス) @page32 id: ecb93650e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小榛 | 作成日時:2023年1月8日 11時