静かな教室 ページ9
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「あれ、なんだ江口じゃん。後夜祭行かないの?」
江「誘われたけど、疲れたから断った。花月は」
「私も。慣れないことしすぎちゃったからね」
後夜祭、校庭ではキャンプファイヤーと打ち上げが行われている。月の下で、炎を囲って笑いあったり、泣いて抱き合ったりしていて、私にはとても眩しい。
「もう終わりかぁ……」
江「……なんか、あっという間だったな」
「そうね〜。いろいろあったけど、みんなが今日を笑って終われるのが嬉しいよ」
江「………」
何も言わない江口の方を見ると、じっとこちらを見ていた。瞳には炎の色だか月の光だかが少し映り込んでいる。
江「………花月、頑張ってたな」
「まあ、そりゃあいちおうリーダーだし、責任者だし、任されたことはやらなきゃだし」
江「今日だけじゃなくて、ずっとだよ」
「えぇー?過大評価しすぎでしょ。……え、なに、どうかしたの?」
いつもより真面目な顔付きで、私を見下ろす江口。
江「………なぁ、おれの話、付き合ってもらっていいか」
「おお、いいよ。なになに」
隣に座ると、江口はつぶやくように語り出した。
江「……おれは、今までなんとなく生きてきたんだよ。学校選びも、友だちも、恋人も、バイトも。ただ楽な方に行って、楽な方法を使って、ぜーんぶおざなりでさ」
「無気力だもんな」
江「適当に話を合わせてれば男子は話しかけてくれるし、愛想良くすれば勝手に好きになってくれる女子がいた。そんな頑張んなくても大抵の事は平均点出来てきた」
「………なにそれ、自慢?w」
江「自慢でも自賛でもなくて、ほんとにそうだったんだよ。やっぱりその場その場で悩んだり、苦しんだり、立ち止まって考えたりもしたけど、でもどっか自分が越えられると分かってるハードルを作ってた」
「越えられると、分かってるハードルか……」
江「一生懸命頑張ることとか、ひたむきな努力とか、がむしゃらに夢中になれるもんがなかったんだよな。……そういうの、知らないままこうして時間を無駄にしてきた。………だから」
「だから?」
おそるおそる聞くと、江口はふっと笑った。
江「今の自分に、ちょっと戸惑ってる」
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ななき。(プロフ) - 春さん» 春さん!いつもご覧くださりありがとうございます!こちらこそこれからもよろしくお願いします(^^) (2019年11月28日 18時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
春 - 続編おめでとうございます!めっちゃいいです!!これからも楽しみにしてます!(^-^) (2019年11月28日 17時) (レス) id: 10bd62f869 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななき。 | 作成日時:2019年11月27日 16時