検索窓
今日:23 hit、昨日:5 hit、合計:33,113 hit

静かな教室 ページ9

▪▪▪





「あれ、なんだ江口じゃん。後夜祭行かないの?」

江「誘われたけど、疲れたから断った。花月は」

「私も。慣れないことしすぎちゃったからね」




後夜祭、校庭ではキャンプファイヤーと打ち上げが行われている。月の下で、炎を囲って笑いあったり、泣いて抱き合ったりしていて、私にはとても眩しい。




「もう終わりかぁ……」

江「……なんか、あっという間だったな」

「そうね〜。いろいろあったけど、みんなが今日を笑って終われるのが嬉しいよ」

江「………」




何も言わない江口の方を見ると、じっとこちらを見ていた。瞳には炎の色だか月の光だかが少し映り込んでいる。




江「………花月、頑張ってたな」

「まあ、そりゃあいちおうリーダーだし、責任者だし、任されたことはやらなきゃだし」

江「今日だけじゃなくて、ずっとだよ」

「えぇー?過大評価しすぎでしょ。……え、なに、どうかしたの?」




いつもより真面目な顔付きで、私を見下ろす江口。




江「………なぁ、おれの話、付き合ってもらっていいか」

「おお、いいよ。なになに」




隣に座ると、江口はつぶやくように語り出した。




江「……おれは、今までなんとなく生きてきたんだよ。学校選びも、友だちも、恋人も、バイトも。ただ楽な方に行って、楽な方法を使って、ぜーんぶおざなりでさ」

「無気力だもんな」

江「適当に話を合わせてれば男子は話しかけてくれるし、愛想良くすれば勝手に好きになってくれる女子がいた。そんな頑張んなくても大抵の事は平均点出来てきた」

「………なにそれ、自慢?w」

江「自慢でも自賛でもなくて、ほんとにそうだったんだよ。やっぱりその場その場で悩んだり、苦しんだり、立ち止まって考えたりもしたけど、でもどっか自分が越えられると分かってるハードルを作ってた」

「越えられると、分かってるハードルか……」

江「一生懸命頑張ることとか、ひたむきな努力とか、がむしゃらに夢中になれるもんがなかったんだよな。……そういうの、知らないままこうして時間を無駄にしてきた。………だから」

「だから?」




おそるおそる聞くと、江口はふっと笑った。




江「今の自分に、ちょっと戸惑ってる」

たかが50センチの距離→←グローリー



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (29 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
58人がお気に入り
設定タグ:男性声優 , 学園モノ , 高校生
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ななき。(プロフ) - 春さん» 春さん!いつもご覧くださりありがとうございます!こちらこそこれからもよろしくお願いします(^^) (2019年11月28日 18時) (レス) id: 42df20d673 (このIDを非表示/違反報告)
- 続編おめでとうございます!めっちゃいいです!!これからも楽しみにしてます!(^-^) (2019年11月28日 17時) (レス) id: 10bd62f869 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ななき。 | 作成日時:2019年11月27日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。